第2話 焼きそばパン


キンコンカンコーン。


なんだか、一気にに疲れたな。

シャーペンの同士がいるとは、思わなかったよ……。

……さて、寝るか。

……………。


キーンコーンカーンコーン。


頬杖をついて、雲ひとつない空を見る。


キンコンカンコーン。


腕の隙間から、雲ひとつない空を見る。


キンコンカンコーン。


ふと、一面中青い空を見る。


…………こうして、俺は昼飯の時間までを過ごしたのだった。


焼きそばパン食いてえな。

椅子から立ち上がって、目的地に向かっていく。

昼休みは、廊下にたくさんの人がいる。

みんな歩いてるけど、たまーに立ち止まってる奴もいいる。

そう言うやつは大体、教室の入り口付近で立ち話してるんだよな。

逆に廊下のど真ん中にぽつんと立ってる奴いたら怖いだろ。

「あ、ごめん」

人とぶつかった。

そんなに痛くはないけど…。

落としてんだよなあ、ハンカチ。

振り返ると、中背で茶髪の男子だった。

話しかけるか、否か。

…流石に落としたままなのは、可哀想だろ。

彼に近づいて、そっと声をかける。

「これ、落としたよ」

少し止まってから、茶髪男子は回れ右をする。

「…ん?ありがとう」

「全然大丈夫だよ」

…………………。

………………。

…………………。

なんだか、少女漫画みたいだったな。

ハンカチを落として、拾ってあげて、二人は出会う。

よく出来てるよなー。

俺も姉ちゃんに、少女漫画読まされたことあったっけか。

あの時俺、なんて言ってたっけなー?

ガキすぎて、あんまりろくなこと言った覚えがねえけど。

たしか…

「大丈夫か?」

え。

どうやら、いつの間にか固まってたみたいだ。

「すみません。

なんだか面白いなーと思って」

茶髪男は、俺に背を向けながら。

「そうか」

とだけ言った。

なんだよ冷たいな。

どこが少女漫画なんだよ。

ご都合主義のかけらもないじゃねえか。

………………。

ああ、思い出した。

子供の頃の俺が、少女漫画になんて言ったか。

『がおーーー!!!』

いやなんだよこれ。

恐竜の鳴き声か?

少女漫画にどうして恐竜出てきてんだ。

サバイバルしすぎだろ。

母さんも父さんも、苦笑していた。

すっと、前から歩いてきた人を避ける。

ここを、もう少しまっすぐ行ってから右に曲がれば、購買につく。

……焼きそばパン、売ってねえじゃねえか。

購買のおばちゃんがバツが悪そうに、

「ごめんねー。焼きそばパン売り切れちゃってさ」

……?

優しいばあちゃんだな。

俺が焼きそばパン目当てとわかって、声をかけてくれるとは…

「全然大丈夫ですよ。…メロンパン買ってもいいですか?」

「本当にごめんね!まいどあり!」

ばあちゃんは申し訳なさそうに、会計を済ませた。

よし、メロンパンを買ったぞ。

軽快な足で、目的地向へと向かう。

目指すは教室だ!

……はー、覚えてくれてたんだなあ。

はは、今度あの婆ちゃんに挨拶でもしてみるか?

………気づいたら、教室に着いていた。

立ち話をしている生徒を横切って、教室に入る。

見た目の割に歩く距離の多い教室から、自分の席に座る。

教室の中心から、声がした。

「はー、まじで。象形文字になれなかった人外真美子な。ふっひひ、はははっ」

………渡辺さん、大丈夫かな?

渡辺さんの席をみると、そこにはあの茶髪男がいた。

話すためにいる、というよりかは、隣の席のだけのようだ。

…でも、なんか話してるよな。あの無愛想男…なに話してやがんだ。

袋からメロンパンを取り出す。

袋、捨てるか。おう。

再び席から立ち上がって、ゴミを捨てにいく。

足に重りがついてるような、ゆっくりとした足取りで。

……………。

みんみんみんみん。

とか。

普段聞こえた蝉の音も、全て遮断した。

ただただ、

……

「焼きそばパンほしい」

という声を聞くためだけに。

……………。

は?焼きそばパン?

それは俺が買おうとしてたものなんですけど。

茶髪男の方を見る。

………目が合ってしまった。

まずい。

目を逸らそうとすると、彼に手招きをされた。

今度こそ、重い足取りでそちらへ向かう。

怖い。何を言われるんだか。

無意識の頭の中で、ぐるぐると思考を巡らす。

………ごめん!目があっちゃったな。

前にハンカチ拾っただろ?

その時から、気になってたっていうか……。

これで行けるか?待て待て、それじゃ理由になってない。えーああ。

………。

「メロンパン欲しい」

…………は??

「俺、こいつに焼きそばパンあげなきゃいけないの」

…………。

「だから、そのメロンパン分けてくれ」

………。

「いーよ」

メロンパンを差し出す。

「全部食べていいよ」

お腹、空いてなかったし。

「丸ごと貰っていいのか?」

甘いもんの気分じゃないしな。

「いいよ」

俺の購買トップ3は、焼きそば、クロワッサン、ウインナーパンだ。

「そうか。ありがとう」

頭が痛い。

メロンパン買ってくるんじゃなかった。くそ。

……そういやなんで買ったんだっけ。






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俺達のシャーペンと抵抗と 天気 @Laikinto6913

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