家族

@amane404

一話完結

「お母さん!今度の授業参観ね!」

「今忙しいの後にして…」


ああ、またこうだ、どうせ授業参観なんて来てくれない

お父さんがいた頃はお母さんとっても優しかった

でもいつの間にか、夢でも見ていたのかってくらいに急にお父さんが居なくなっちゃった

あれはたしか、私が小学4年生のとき

お母さんと私だけになってからお母さん大変になっちゃったんだって

私が100点のテストを取ってきても

「今忙しいの」

私が先生に褒められたよって言っても

「今忙しいから」

とにかく忙しいらしい

私がいるから忙しいんだって

私のために忙しくなっちゃったって少し経ってから分かったの

私は今年で中学生になる

お母さん、私のせいで忙しくなっちゃったなら、私がいなくなったらお母さんお休み取れるかな

小学6年生の時に買ってもらったスマホで色々調べたんだよ

児童保護施設があるとか支援所があるとか

私お母さんがどんどん怖くなっちゃうなら居なくなりたい

私の家は埼玉県てところにあるらしいから東京が少しだけ近い

東京にはなんでもあるんだって

なんでもあるなら私だけで言ってもなんとかなるよね

お年玉で新幹線の切符もちゃんと買えたの

駅員さんに東京まで行きたいのって伝えたら

「お使い?偉いね〜」

なんて褒められちゃったんだから

私が家から居なくなろうとしてることに誰にも気づかなかった

お財布と、小さい時にお父さんとお母さんから誕生日に貰った小さなくまのぬいぐるみをリュックに詰めて

ドキドキしながら次の日の朝を待つ


「行ってきます」


もちろん返事なんて来ないよ

お母さん忙しいんだから

中学校に行くふりをして新幹線に乗り込む

初めての新幹線すごい景色がどんどん変わっていく

お母さん、これでお休み取れるかな

わっすぐ着いちゃった

東京駅だって

広い

迷子になっちゃいそう

ぐるぐる歩いてたら着けるのかな

少しだけ不安になってきた

でも大丈夫、私にはお父さんとお母さんから貰ったぬいぐるみが付いてるもん

ここどこなのかな

あっち行ったらどうなるのかな

わかんない、わかんないよ

私が大宮駅を出発したのが13時東京に着いたのがそれから30分後くらい

どうしようもう16時になっちゃいそう

ここはどこなんだろう

怖い、怖いよ

人がいっぱいでなんだか飲み込まれそうで急いでトイレに入る

ぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる

どうしよう、どうしたらいいんだろう

お母さん、ごめんなさい、ごめんなさい

自然と涙が溢れてくる

どれだけここにいたんだろう


コンコン

「大丈夫ですか?」


大丈夫じゃないよ

だからガチャってドア開けちゃった

そこには駅員さんがいて泣いてる私を見てびっくりしたみたい


「お母さんかお父さんとはぐれちゃったの?」

「お父さんはいないの、お母さん私がいるのが忙しいからお休みさせたくて1人できたの」


そこからはもうびっくりするくらいの速さで私はなんだか分からない部屋に連れてかれた

私スマホ持ってたからそれ見せたら駅員さんがどこかに電話し始めた

絶対にお母さんのところだ

怒られちゃう

また忙しくさせちゃった

どうしよう、どうしよう


「もう大丈夫だからね、お母さん迎えに来てくれるって」


大丈夫じゃないの、忙しいお母さんをもっと忙しくさせちゃうの


「ひとみ!」


お母さんの声だ

怒られちゃう

私はぎゅって体を縮こませる

そうしたらびっくり

お母さんがぎゅーって抱きしめてくれるんだもの


「心配したんだから!どうして1人でここまで来たの!」

(だってお母さんが忙しいってお父さんが居なくなってから怖くなっちゃったからお休みあげたかったの)


そう言おうとしても私の口からは


「おかぁさぁん!ふぇぇん!!こわかったの!おかあさん!!」


こんな言葉しか出ない

なんで?考えてる事は違うのにどんどん涙が溢れてきちゃう


それからはお母さんが駅員さんに沢山お礼をして、車で一緒に帰ることになった

その時にはもう涙は少しだけ止まってて

ちゃんと理由を説明したんだよ


「お母さん、忙しいっていつも言ってるから私が居なくなっちゃえば忙しくなくなると思ったの」


そう私が言ったらお母さんまたぎゅーって私の体抱きしめてくれた


「そんなわけないじゃない!ごめんね、ありがとうお母さんのこと考えてくれて、でもお母さんひとみが居ない方がずっと悲しいの」

「ひとみはたった1人の家族なんだから、大好きよ、愛してるわ」


そうなんだ、私お母さんにとって邪魔じゃなかったんだ

居ていいんだ

私お母さんの所にいていいんだって

授業参観も来てくれるんだって

私お母さんだーいすき!






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