新大津亰へようこそ!②


 ルーシーは胸を高鳴らせ、少年と軍警の攻防を観ようと立ち止まった。だが、ここは改札を出てすぐの地点。後ろから人が大勢押し寄せて来た。


「わわっ」


 後ろから来る人の波に押されて足が絡まり、前につんのめる。さっきよりも軍警の怒号が近いなと感じ、顔を上げると――


「⋯⋯っ⋯⋯おいっ!」


 ちょうどこちらへ走って来た少年が、ルーシーに躓きスクールバッグを落としてしまった。


「え、ちょっと⋯⋯」


 何が何だか分からないルーシーを無視して、鞄を拾い走り出す。後を追って来た軍警にスマホを踏まれ、駅の利用者には邪魔だと言われてしまった。



「あ"あ"〜もう⋯⋯やだっ!」


 塾には間に合わず、スマホの画面はバキバキ。巻き込まれたルーシーには誰も手を差し伸べなかった。


 駅の隅の休憩スペースで、他の荷物の無事を確かめようと鞄を開けた。

 

「あれ、ナニコレ?」


 中を改めて見ると、全く身に覚えの無いものが入っていた。いや、ルーシーの荷物は何一つ無かった。


 冷静になって先程のことを思い返す。鞄の外見を舐めるように見回すと、学校支給品のマークが無かった。


「⋯⋯もしかして、さっき取り違えた?!」


 軍警に追われていた訳アリそうな少年の荷物と取り違えたのだろう。


 鞄の中にはファストフード店のレシートに奇抜なデザインのジャケット。そして闇バイトの書類のようなものがあった。底にあった小箱を開けると、赤い宝石のような結晶が入っている。


「⋯⋯なんだろ、コレ」


 消しゴムほどの大きさのそれは、光を当てなくとも煌々とした輝きを放っている。よく目を凝らすと、中に黒い球状のコアのようなものが入っていた。


 ネットの画像検索に掛けると、案外あっさり引っかかった。


『――マナテリウムの結晶。長時間マナ侵食に晒され続けると、怪物に変容する。』


 マナ――十年前に地上世界を壊滅させる要因にもなった、人知の及ばぬ高エネルギーである。


 十年前の惨劇が、脳裏のかすめた。


 視線を落とすと、掌の上のものは静かに脈打っていた。


 










 


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