第11話


清水は神様と同じ部屋で二人きりだった




ヒラヒラのシャツと長いズボンをはいていた




さらわれた時の格好である




神様は杖をもっていなかった




清水は今ここにいる事実がまだ受け入れられなかった




自分は犯罪に巻き込まれたのである




一生逃げられないかもしれない




「相正悟は死んだ」




と神様は言った




清水は泣いた




「どうしてそんなひどいことするの」




「やつは世の中にとって悪だ」




「あなたの方が悪でしょ」




清水は勇気を振り絞って言った




「人間 教育が大事だ」




と神様が言った




「わしはあんたを好きになってしまったんじゃ」




「やってることが逆でしょ」




「一度でいいから絶世の美女と恋愛をしてみたかった」




「神様と言うより悪魔ですね」




と清水は涙声で言った




「お前は女神になる」




「私に不可能はない」




と神様は言った




「いや」




と清水は言った




「あなたの言うことは聞かないです」




「私も強引なてはつかいたくない」




と神様




清水は後ずさりした




「私を受け入れる気になったらこの部屋から出してやる」




「欲しいものはないか」




清水は絶望した




この男にしたがって生きるしか道はないのか




闘ってみるのは恐かった




相手には手下が大勢いる




この男に嫌われたら殺されるのではとも思った




「考えておけ」




と神様は言った




「世話は信者達がしてくれよう」




「信者たち」




と清水は聞き返した




「気が触れた女信者だ」




と神様は言った




「私を受け入れないなら一生この部屋で生きることとなる」




まさかそんな人生だとは




清水は泣いた




この男の言いなりになって




その後何かするか




一生この部屋で過ごすのか




「わかった言うことを聞く」




と清水は言った




「よろしい」




と神様




「欲しいものは何でもやる」




と言った




神様は女信者たちをよんだ




「この女性の世話をしろ」




「そして今晩 わしの元につれて参れ」








相正悟と小林、奈々の三人は島の山道を歩いていた




「多分どこかに入り口があると思う」




と奈々が言った




「すげえな どうやってこんなところに教会を隠すんだ」




小林が言った




「多分藪の中に入らないと見つけられないんじゃないですか」




と正悟が言った




「多分地下ではなかったはず」




と奈々




「洞窟は関係ないのかな」




と小林




「記憶が正しければ藪の中だ」




と正悟




「入り口は地下だったかも」




「警備は誰もしていなかった」




と正悟




「藪の中は歩きづらい」




奈々が言った




「じゃ地下から探そうぜ」




と小林




三人は島のあちこちを探して回った




「少し休もうよ」




と奈々




「しらみつぶしに探すのは効率が悪い」




正悟が言った




「それしかねえじゃん」




と小林




「あー疲れた」




と奈々




「いい手があった」




と正悟




「なに」




と小林




「あれを見ろ」




三人は正悟の示した方を見た




信者が六人ゆっくりと正悟達に近づいてきた




「あんたらちょうどいいところに来たな」




正悟が言った




男たちは走り、襲い掛かってきた




正悟はパンチ一発で一人倒した




小林と二人の男が揉み合いになる




一人が奈々に襲い掛かった




正悟はあっという間に




もう一人を倒した




一人がビビって逃げた




小林は二人相手にいい勝負だった




奈々はすでに押し倒されている




正悟は奈々を助けにいった




男の後ろからボディーにパンチを入れた




「ううー」




男は倒れもがき苦しんだ




小林にやられた二人が逃げていった




小林は一人を捕まえた




「教会へ案内しろ」




正悟が言った






正悟達三人は男の言う通りに山道を歩いていた




こんなところに道があったとは




知らない道を歩いていくと広いところに出た




奥に四角い建物が見えた




沢山の丸い窓がついていた




「ビックリしたーこんな建物あるんだねー」




奈々が言った




「前に来たところと違うような」




と正悟




「本当にここにいるんだな」




と小林




「ああ 神様はここにいるよ」




と男は言った




「自由にしてくれ、約束だろ」




「わかった」




小林は男を放した




男は道の方に歩いていった




「奈々さん ここ知ってますか」




と正悟




「私も来たことない」




「父専用の教会かも」




要塞みたいだ と正悟は思った




「どうやって攻める」




小林が言った




「こういうのは戦っちゃだめだ」




と正悟




「おーい」




と正悟は大声を出した




「神様 俺は生きてるぞー」




「犯罪のこと全部ばらすからなー」




「おとなしく降参しろ」




と正悟は大声を出した








神様は部屋にいた




ついに清水が自分のものになる




いずれは妻にしてやろう




だがまずは今晩だ




今 清水は一階の居間でくつろいでいるはずだ




少ししたらここに慣れるだろう




何とかして心を開かせたい




だが体が開けば心も開く




その時声が聞こえた




「やーい神様のバカ」




相正悟だ




神様は怒り狂った








神様は部屋を飛び出した




全ての信者達を集めた




「相正悟をやっつけるぞ ワシについてこい」








清水は相正悟の声を聞いた




ほっとして涙がでてきた




だがなんと危険なことをしているのであろうか




心配になった








建物から十人ほどの男達がでてきた




その後から神様自身が出てきた




神様と十人の信者




相正悟、小林、奈々は向かい合った




神様は奈々を見て驚いた




「なぜお前達まで」




と神様は言った




「私達も逆らいます」




神様の後ろで声がした




そこには清水と女信者達がいた




神様はひどく動揺した




「全員やっつけろ」




と言った




が 誰も動こうとはしなかった




「皆私を信じないのか」




と神様




「神様 反省する時だよ」




相正悟が言った




ついに神様は自身の過ちを悟った




「皆さん 許して下され」




と神様は言った




「お詫びに 皆さんに財産を分けようと思う」




皆 一斉に喜んだ




神様の財産はタイヘンな額だった




皆に必要なぶんだけ分け与えられた








小林と奈々の結婚式が決まった




新しい教会で行われる




神様は小林に地位を譲ろうか迷ったが




小林は教祖になるつもりはなかった




教団は神様のものとなった




だが明らかに




世のためになる




教団へと変わっていた




命がけの冒険をした相正悟と清水は




互いを意識したが




それ以上の事はなかった




相正悟と神様は仲直りをした




「何かあったら言ってくれ」




と神様




「その時は頼む」




と正悟




「わしも心を入れかえて修行する」




と神様




「お互い頑張りましょう」




と正悟は言った








相正悟は横浜に帰ってきた




また一人である

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