いつも通り
「ねえ詩乃、どう思う?」
部長が聞いてきた。詩乃というのは、私、野沢詩乃の事。
「どう、ここは!今回、占い同好会とゲーム研究部一緒に泊まるらしいから、それに見合ったもののほうが良いよね!」
現在、合宿の宿泊場所会議中。
この学校、南海学園中学校は公立といえど有名だ。なんせ、100もの部活が意欲的に活動されている。まあ、100も部活があるんだから、資金調達なんてほとんどなくて、自分たちで稼ぐしか無いのだ。合宿でも同じ。だが、合宿では複数の部が一緒に行くことによって大量の資金を調達することが出来る。特に有名な部が良い。
今回私達はこれに見事ヒットした。占い同好会とゲーム研究部という大きな部活と一緒に行くことになった。文芸部という、超貧乏部がだよ!
「ねえ、しーのちゃん、一人で何してんの?」
田代環――目のパッチリしたカマキリのカマみたいなツインテールの女の子だ。私と中2。
「いや、ちょっと経費と人数を考えてどれにしようか考えてて⋯」
なーんていう、渾身の嘘をついて、なんとか切り抜ける。
「ねえ、千秋ちゃん!何が良いと思う?」
環が千秋に聞いてきた。彼女も私と同じ中2。千秋は、背中までの髪を無造作に結った女の子。いつも静か。学校10第美女という男子の作った謎の何かしらの上位にいるらしいが、本人に自覚はない。
「さあ、どれでも良いよ⋯。」
なんて、しれっとしている。はあ…、全く⋯。
「千秋先輩!俺、もっと安い方がいいって言ったのに、みんな聞く耳持たないんです!何とか言ってくださいよ!詩乃先輩も!」
流石修くん、現実的、だけど、私には関係ないの!
「なあ、決まったか〜?」
「決まりました?」
2人の男女がやって来た。
男子の方は三浦祐一。ゲーム研究部だ。私の幼馴染で隣の家だから、よく窓際で二人で話している。もう一人の女子は真田美晴。占い同好会の中1だ。
部長が椅子に座ったまま手を上げて言う。
「決まってなーい。候補はあるんだけどね〜。」
「じゃあ、見せて下さい。」
いやあ、ちょっと高すぎだったら悪いな⋯、と思っていたら、想定外の反応が来た。
「安すぎないか?」
「安すぎじゃないですか?」
「お前ら、もうちょっと貧乏性直したほうが良いよ。」
「そうですよ、せっかくですし羽目を外したいでしょ。」
いや、私達は民宿で羽目を外して大家に怒られたことがあるんだが⋯。そして、お前らのほうがおかしくないか?結構高いぞ。フクロウ荘って。
まさか彼らはもっと高い物を選んでるんじゃ…。
真田さんが言い出す。
「ちょっと高いんじゃないかなんて思っちゃいけませんよ。最期の合宿の人もいるんですから。合宿では奮発して良いんですよ。」
いや、フクロウ荘でもめっちゃ奮発しているぞ⋯。
「りょうかーい。そっちはどう?」
あっさり受けちゃうんデスカ!部長!
「オルロフ・ロイヤル・ホテルです。」
はあ!?
「はあ!?」
私の感情とみんなの言葉が同時に出る。
オルロフ・ロイヤル・ホテルってなんかくっそ高いホテルだよね⋯。
何故⋯、そんな高いものを選べるの?
お金持ちの部活の権利と感覚はうちら貧乏部活の部員には判らない⋯。ああ奥深い。
韓国が聞いた。
「でも、それって学校側がそこに行ける費用を出してくれるってことだよね!?」
「そうですよ〜。」
え?あ、そゆこと。
「やった!うちらそんな高級ホテル行ったこと無いから最高だよ!」
そうですか…。
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