空を飛ぶ爽快感と、ようやく安全な場所に辿り着いた安心感がある作品です。
まず、「密偵」という設定が生むサスペンスの構造です。
主人公がいつ正体を暴かれるのかとハラハラしながら読み進めていました。
けれど、物語が進むにつれ、受け入れる側が最初から全てを把握した上で「OOOO(ネタバレ防止)」ことが明かされ、緊張感が丸ごと裏切られました。
ここの緊張からの落差に関してはよく書けていると思います。
また、悲壮なスパイものだと信じ込んでいた枠組みが、実は温かい保護の物語だったという逆転に、著者の当初考えていたプロットや構想が見えました。
次に、離れ離れになった二人の視点を並行して描く構造です。読者には両者の安否が見えているのに、当人同士は互いの無事を知らない。
この情報の非対称性が、再会への期待と焦燥を同時に煽り、スクロールする手を止められませんでした。
一話あたりが1300文字前後で記載され、わんこそばのように次、次と読めるのはWeb作品らしい、良いところだと思います。
最後に、主人公と至宝の鵬が初めて心を通わせるあの場面では、周囲の声が聞こえなくなり、合図もなく大空へ舞い上がる。
わざと音を消して、読者を世界に浸らせるという書き方がとてもよかったです。
ここはよく何かを見せたいときに私も使う方法なので、同じ香りがしました。
「人は人」という理念が息づくこの世界を書き上げてくださり、ありがとうございます。
とても楽しい作品です。
今後とも応援しています。