第2話 選定の眼、未来を見る少年
――昼下がりの青い空。
その下に広がるのは、魔導機と魔術文明が融合した
整然と敷かれた浮遊街路。
その片隅で、ひとりの少年が、ぼんやりと空を見上げていた。
「また……見えた。あの崩壊の未来」
天城 叶翔(あまぎ かなと)――15歳。
普通の学生として暮らしていたはずの彼は、ここ数か月、誰にも言えない異変に苦しんでいた。
それは、“未来の幻視”。
ただの予知ではない。
彼の中に存在する何かが、無数の未来因果を見せつけてくる。
数秒後に起きる事故。
数日後に泣く少女。
数年後に燃え尽きる都市。
それらすべてを、彼は【選ぶことができる】。
いや、正確には――
「俺が“どれを選ぶか”で、未来が決まってしまう……」
◆
「かなとー! また上の空でしょ!」
背後から飛んできた軽やかな声。
そこには、銀髪の少女が立っていた。
「セレス……遅刻しそうなんだけど?」
「いつもそんな顔してると、老けるわよ? 15歳なんだから若さ出していこ!」
セレス=ヴァルグレイス。
魔族と人間のハーフ。
そして、叶翔の幼馴染であり――何よりも重要な“存在”。
翔は未だ知らなかった。
彼女が、自身の力を制御する「鍵の末裔」であることを。
◆
その日の午後。
魔導学院の演習ホールで、事故が起きた。
暴走した実験体の魔導獣が、生徒たちに襲いかかったのだ。
時間が止まったような緊張。
生徒たちが叫び、逃げ惑う中――叶翔は見た。
《このままでは、3人死ぬ。セレスも傷を負う。》
《……だが、ここで“右に跳ぶ”選択をすれば、誰も死なない代わりに、俺が左腕を……》
数パターンの未来が、頭の中に同時に流れ込む。
そして――選んだ。
「……俺が行く!!」
瞬間、叶翔の体が自ら跳び出していた。
次の瞬間、爆発音と共に、彼の左腕が鮮血に染まる。
「かなとおおおおお!!!」
セレスが叫ぶ中、叶翔は静かに目を閉じた。
『これが、俺の選択。間違っていない……はずだ』
◆
その夜。
叶翔の夢の中に、“少女の影”が現れた。
『あなたは……また選んだのね』
声だけが響く。
その影は、確かに――どこか懐かしい温もりを持っていた。
『あなたが選び続けるなら……私たちは、また目覚めるかもしれないわ』
「……君は、誰?」
『私はレティア。
あなたが選ぶべき未来の、最後の鍵。』
◆
目覚めた叶翔の腕には、完全に回復した左腕と、
奇妙な“光の紋章”が刻まれていた。
それが、彼が“選定者”としての第一歩を踏み出した証だとも知らずに――
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