第25話 後ろで、とん、という音が
図書委員なんて、だいたいおとなしい子がなるもので、それがほかの高校の子といきなりいっしょになっても、自己紹介して、議長選んで、それで……となると、発言したりするものではない。
だいたい、何のために集まってるのか、それがはっきりしない。
だれも何も言わないので、美聖が、議題をどんどん出して、意見を言った。
それで、議長に選ばれてとまどっていた市立農工高校の女子の子が助かったという感じになり、それで頬を赤くして自分でもずんずんいろいろ言うようになった。そうなったら美聖も止まらなくなった。
それで、けっきょく、会議は、
しかも、最後は、その市立農工の議長の子と、美聖と、梅蘭の図書館の先生とで、次回に向けた打ち合わせ、とかをやって、もっと遅くなった。
議長の子は、その図書館の先生と帰る方向が同じということで、先生に車で送ってもらうことになった。先生は、美聖も駅まで送ろうか、と言ってくれたのだけど、方向が反対だ。それに、駅まで送ってもらっても、けっきょくロープウェイ行きの最終バスに乗らないといけないので、だったら、梅蘭高校前、いや、梅蘭学園前のバス停で待っても同じだ。
バス停で待つ。
ここは、ちゃんとターミナルっぽいスペースが作ってあって、そこにバス停がある。布張りのテントみたいなのだけど、それでも大きい屋根があり、その下に二つずつ、ベンチも並んでいる。ベンチは背もたれがないので、どちら向きにでも座れる。屋根もベンチも新しい。
学校の格の違いというのか。
ま。
やっぱり、バスを利用する生徒数の違いだね。
朝の登校時間と、午後の二時台から五時台ぐらいまでは、駅とこの梅蘭学園前を往復するバスも設定されているらしい。時刻表を見ると、三時台とかは五分おきぐらいに一本出ているみたいだ。
ま、いいけどね。
停留所のところには電灯はない。遠くの、入り口の守衛所の明かりと、道路からここに入ってくる入り口の街灯とが、ここにいちばん近い明かりだ。
それで空にはいっぱい星が見える。満天の星って感じだ。
よく晴れている。それに。
街の中心部でこれだけ星が見えるっていうのは、やっぱり、いなかだ。
ちなみに、ここより高いぶんだけ天に近い美聖の家では、勉強部屋の窓からもっと細かい星まで見える。だからべつに感動したりはしないけど。
一人になって、さっきの話を思い返してみる。
みんなスマホを使うようになって、直接会ってのコミュニケーションをしなくなった、なんて嘘だよね。
だって、目の前でメッセージ送って、写真送って、それで目を合わせて笑ったり話したりするじゃない?
そういうのを、スマホがなくてずっと生きてきた大人の人にどうやってわかってもらうか、って、どうすればいいんだろう?
そして、それを、本題の、みんなスマホで情報を集めて本を読まなくなったときに、図書館の役割は、って話にどうつなぐのだろう?
だいたい、みんな昔はほんとに本を読んだのか?
読む子は読む、読まない子は読まないって、いまといっしょじゃなかった?
わからない。
お母さんとかにきいても、ほんとのことは教えてくれないだろうしなぁ。
梅蘭高校の図書館の先生が「大人って、過去を美化したがるものだからね」と言ってたぐらいだから。
「ま、そういうのは次の会議で考えればいいか……」
そう自分に言って、また夜の星空を見上げる。
ここは、まだ、涼しいですんでいる。
あの
いまの会議で、長袖を着ていたのは美聖だけだった。
でも、すみれ台では、もう長袖の夏服では寒い。もうすぐ冬服を着る季節だよね。
ふいに、後ろで、とん、という音がした。
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