第2話 おばあちゃんの話



隣に座ってきたおばあちゃんは杖をついていて、ボクの隣が空いてるのを見るとまっすぐこちらに向かってきた。


「ボク、ここ座っていいかい?」

「いいよ!」




おばあちゃんはよっこいしょっといいながら、ボクの隣に座った。

おばあちゃんの手には向日葵が握られていた。



「いやぁ、暑いねぇ毎日。」

「うん!でもボク夏好きだよ。夏休みがあるから!小学校でね水遊びもしたんだよ!」

「そりゃあいいね。涼しくて」



おばあちゃんは楽しそうにボクの話をうんうんと聞いてくれる。




「おばあちゃんは夏好き?」



少し悩んだような顔したけど


「そうねぇ。少し前は大っ嫌いだったけど。また好きになれたね」

「...どうして?」

「向日葵が咲くからさ。お父さんがいつもくれる花で今日は娘が持たせてくれたの。そんな向日葵の花も花言葉も大好きでね」

「はなことば?」

「花にはひとつひとつ意味があるの。誰かに花を贈る時も意味に沿ったもの贈るんだよ」

「へぇえ。じゃあひまわりはなんて言うの?」






「......あなただけを見つめる」



手に持っていた向日葵をそっと口に近づけ、幸せな顔してる。





「おばあちゃんは何しに行くの?」

「あたし?あたしはね、お父さんに会いに行くんだよ。久しぶりでねぇ」

「あれ?一緒に住んでないの?」

「ええ。夏の暑い中に無理して畑仕事してて倒れちゃったのさ。寂しかったけど...やっと会えるの。待ち遠しかったわぁ」

「よかったね!」




上を見上げながら話すおばあちゃんは本当に嬉しそうだった。

電車のアナウンスが流れる。



「あたしはここで降りるね。ボク、体調に気をつけるんだよ。」

「うん!バイバイおばあちゃん」

「ばいばい」



振り返って手を振ってくれたおばあちゃんの顔はとても晴れやか。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る