第2話:彩葉が俺のマンションにやって来た理由。

僕は愛車のスーパーカブで毎日大学まで通っている。

そして僕が所属している研究ラボ、そこで極秘裏にあるモノが研究開発されていた。

その研究というのは実はバイオロイド「クローン」の開発。

で、近年になって長年の研究による試行錯誤の末ついにバイオロイドが完成した。

世界で唯一・・・これは画期的な出来事だった。


そしてバイオロイド開発のトップにいる人が高村 武たかむら たけし教授。

ML細胞技術においては第一人者・・・権威といってもいい。


そして生まれた女性のバイオロイドは「彩葉いろは」と名付けられた。

実は彩葉は168番目にして、ついに完成したバイオロイドだから168はイロハ

って読めるから、それを日本語読みにして「彩葉」。


で、なぜか彩葉はメイドの格好をしている・・・それはなんてことない理由。

教授がメイドさんが大好きだと言うだけ・・・まあ理由なんて得てしてそんな

もんだろう。


どっちにしてもラボには男性もいるから裸のままはマズいだろうと、どうせ

服を着せるならと教授がメイド服を買って来て彩葉に着せた。

セーラー服と迷ったみたいだ・・・どっちにしても科学者である前にスケベな人だ。

それがもとになって彩葉はバイオロイド改めメイドロイドってことになった。

え?セーラー服ならジェーケーロイドになってたのか?


身長は155センチ、髪は茶髪でもってツインテール・・・お茶目でキュートで

めちゃ可愛い。

本当なら歳は17・8歳と言ったところだろうけど、生まれて一年も経ってない

から実質ゼロ歳ってことになるのかな。


実際にはクローンの研究は国から認可は降りていないから彩葉は極秘裏に

開発せざるを得なかった。

違法だけど時にはルールを破ってでも研究しなければ科学は進歩しない。

と言うのが教授の考え・・・神を冒涜しても革命は必要なのだ。


だから彩葉の存在は現在のところ高村教授の娘と言うことになっている。

このことは僕を含めて研究員の数名しか知らない。


現在、感情面、知識面、言語面については、ある程度の基本的教育はすでに

受けている。

あとは実践経験・・・社会勉強が必要と言うことか・・・。


そして彩葉が生まれて約一ヶ月あまりして・・・ある日、僕は高村教授から

呼び出された。


僕のような研究員のはしくれが教授に呼び出されるなんて珍しいことだった。

悪いことばかり考えながら教授の部屋にへ行くと高村教授が待っていた。


「おう、森沢くん・・・そこに座ってくれたまえ」


僕は教授に言われるまま気持ち良さそう〜なフカフカのソファに座った。

そして教授は自分の机の椅子に座ったまま僕に言った。


「実は君に頼みがあってね、それで来てもらったんだか・・・」

「ちなみに君は今、付き合ってる女性はいるのかな?」


「いえ、いませんけど・・・」


(彼女どころか、ガールフレンドさえもう何年もいないよ・・・)


「そうか、それは好都合」


(彼女がいないのが好都合ってどういうことだよ・・・)


「彼女がいないことが、なにか問題でもあるんでしょうか?」


「いやいや、おらんことがベストだと言っているんだよ」


「これから話すことはラボの研究員も知らない・・・私と、これから聞くで

あろう君だけだ・・・だから極秘裏にことを運ぶ」


「実は、彩葉を君の個人的生活エリアの中で預かって欲しいのだ」


「えっ?・・・・・」

「でも・・・そんなことして彩葉がいなくなれば研究員の人たちに怪しまれ

ますよ」


「だから彩葉は突然の細胞劣化により生命維持ができず夜中に亡くなったこと

にする」


それは耳を疑うような言葉だった。


つづく。


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