有限へ
飛ぶのは怖かったから落ちた
屋上の縁に立って、体を前に倒した
周りの景色が後ろに吹き飛んでいく
かなり下に感じていた駐車場の地面が、凄い速さで近づいてくる
とうとうやったんだ—
…
…これでよかったんだろうか—
走馬灯なんてウソだった
第一、思い出すことも、思い出したいこともない
なんだったんだろう?
…なんで、落ちたんだろう?
…今更…
こんなこと考えたくもない。さっさと地面に着けばいい
…
そういえば…
自殺した人は、飛び降りた瞬間に飛んだことを後悔する、と—
「生きたい」と感じると、いつか聞いた
これがその気持ちなんだろうか
わからない
でも、もし、そうだったら―
私もそれを、感じたと思う…
鼓動が脳に響く
まだ時間がある 地面に着くまでには…
頭の中がどんどん早くなっていく 地面との距離が空いていく—
何も見えなくなった
真っ暗じゃない。灰色の世界が広がっている
…
…
考えている限り、いつまでも地面に着かない—
腕をゆっくり、灰色に向かって伸ばしてみた
顔のすぐ前で、手のひらがコンクリートに触れた
あ…
しばらくそのまま動かなかった。体全体で、地面の感触を確かめる
もう、落ちていない—
上半身を起こした
はぁ はぁ…
恐る恐る立ち上がる。静かな駐車場だ
上を見上げた
さっきまでいた屋上が見えた。きれいな青い空との境界
鳥が鳴いている。音が戻ってきた
落下 Kei @Keitlyn
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