おおかみこどもの雨と雪 徹底解説

@weirdo

#0 はじめに

※本記事はネタバレを含んでいます。









「おおかみこどもの雨と雪」は、2012年公開のアニメ映画。監督は細田守。細田監督のオリジナル作品としては三作目の作品です。

細田監督作品は脚本に関して賛否両論別れる作品が多く、「演出家・細田守の作品は大好きなのに脚本家の細田守が台無しにしてしまう」と評価されることもしばしば。五作目の「未来のミライ」はその好例といえるでしょうし、本作も脚本に関して賛否を受けがちな作品です。

しかし当時の空気感としては、「時をかける少女」「サマーウォーズ」に続く新作。そして、非アニメオタクの老若男女が楽しめる長編アニメを作れる存在として、スタジオジブリに次ぐ稀有な存在だった(君の名はの大ヒットは2016年)ことから、当時の細田監督は「ポスト宮崎駿」として非常に高い期待が寄せられていました。そんな最中に公開された「おおかみこどもの雨と雪」は、前二作の興行収入を大幅に上回る大ヒットを記録することになります。

本作は高校生青春モノの前二作から、シングルマザー根性子育て奮闘記へと大きく転換した作品でもあります。苦学生の「花」が「おおかみおとこ」と出会い、二人の間に姉の「雪」と弟の「雨」、二人の子供を授かります。しかし、花は子供が小さいころにおおかみおとこと死別。気持ちが高ぶるとおおかみに変身してしまう雪と雨の子育ては一筋縄でいきませんが、シングルマザーとして奮闘する花の子育てが描かれます。

この映画、花が主人公だと思われがちです。確かにそれは間違いではないのですが、この物語の語り手に注目すると、少し違った視点が見えてきます。


「おとぎ話みたいだって、笑われるかもしれません。そんな不思議なこと、あるわけ無いって。」

この物語は、そんな語りから始まります。この語り手、いったい誰なのでしょうか。

語り手は、「でもこれは確かに、私の、母の物語です。」と続けます。つまり、この語り手は母の娘である雪なのですが、どんな雪なのでしょうか。中学生?高校生?成人して大人になった頃?。どんな雪が語り手なのか序盤ではまだ掴めませんが、映画の最後の最後まで見ると、この語り手の正体が明かされます。

物語の最後の最後。雪は、「私たちを育てた十二年を母は振り返って、まるでおとぎ話のように一瞬だった、と笑いました。」と語ります。つまりこの語り手は、十二歳の雪なのです。その直前のカットでは、雪が花に宛てた手紙が映されます。手紙には、「色々なことがすごく昔のように思えて寂しくなります。まだ半年もたたないのにね。」「もうすぐ夏休み。しのちゃんは毎日まだかなあと言います。」とつづられていることからも、語り手が中一で十二歳の雪であることが分かります。

雪は中学進学と同時に家を出て寮に入ります。親元を離れてから数カ月経ち、もうじき夏休みがやってきて初めての帰省が待ち遠しく感じる頃、雪が自分の半生を振り返る...。おおかみこどもの雨と雪とは、そんなストーリーのお話なのです。


おおかみこどもの雨と雪の構成とあらすじは、おもに下記のように分けることができます。当解説は、この場面ごとに解説してゆきます。


#1 東京編(雪~5歳・雨~4歳)

おおかみおとことの出会いから、雪と雨の誕生、おおかみおとことの死別、東京での子育てを経て、田舎への移住を決める所までが描かれます。


#2 富山移住編(雪5歳・雨4歳)

富山に移住した花、雪、雨の三人。里の人々との交流が描かれます。


#3 雪と雨が小学校に入学(雪6~7歳・雨5~6歳)

雪と雨が小学校に入学。雪は学校生活を楽しく過ごしますが、雨は学校になじめません。


#4 雪が小学四年生のとき(雪9歳・雨8歳)

雪はあるきっかけでおおかみとなり、転校生の草平にケガを負わせてしまいます。雨は学校に行かず、先生と呼ぶキツネのもとで山での修行に明け暮れるようになります。


#5 雪が小学六年生のとき(雪11歳・雨10歳)

雪はおおかみである自分に折り合いをつけ、草平に自分の秘密を打ち明けます。雨はおおかみとして自立し、山へと去ってゆきます。


#6 現在(雪12歳・雨11歳)

雪のナレーションで、物語は大団円を迎えます。

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