第6話 仲間(1)

『おい影武者!本当にこの先に奴らは居ないんだな!』


『勿論だ。この命に変えて保証する。』


私たちは今、実際に取引されている現場にいる。今回の取引されるものは薬物と違法に改造された銃。

その違法に改造された銃というのは私たちのような能力を持っていない人でも能力と同じ効果が得られる銃、通称『魔銃』。

その魔銃が流通してしまうと戦争にかりかねない、という理由でこの国では違法になっている。


『見つけた、魔銃の作成図。』


『良くやった。そのまま換気口を使って戻ってこい。』


モニタールームでみんなの事を観察している私は指示を出す事も出来ないのである。


「あーあ、私の能力がすぐに使えたらなぁ。」


「暁、私語を使う場所ではないぞ。」


「は、はい。」


排気口を渡れるのは先生の能力のお陰。能力を使うことに長けている人は人に能力を渡すことが出来る。が、それは持って数分。長けている人でも人に渡すと能力が半分以下になるのだ。


『女神!その下に奴らがいる。音を立てるな。』


『りょーかい。』


そしてもう1つ、幻こと影山勇士の能力は『脳内伝達テレパシー』。これは勇士の手がおでこに当たることで使用できる。

なんてチート技なんだ。


「動くな!」


ガチャリと銃の引金を抜く音がした。


『な、なんで、見つかったんだ?偵察のやつらが監視してたはずだぞ!』


『荒田、脳内で叫ばないで。私たちは戦闘隊。こんな時こそあんたの好きな光線銃でぶっぱなすんでしょうが。』


『いや、それは不可能だ。』


雅零先輩がそう言った時、銃は発砲された。

そんなことが起きているのにも関わらず、先生たちは現場へ向かおうとはしない。


「こんなガキなら俺たちでもやれる。取引の邪魔はさせない。」


2発目の発砲が始まる。


「ぐあぁ!!!!」


一発目は夢那ちゃんの腕をかすり、二発目は荒田の足を貫通した。


「先生!現場へ急がないとみんな死んじゃいますよ!」


「暁、あそこは現場だ。故に、試験でもある。あのような現場で死んではスパイ失格だ。それに、バレている時点で失格……と言いたいところだが、どのような立ち回りをするかで評価は変える。」


先生は本物のスパイ。人の感情に同情はしない。だからいくら生徒であっても手助けは一切しないのが先生のやり方。


「へへ、魔銃の威力はどうだ?痛いだろ?はは、そうやって苦しめ。せいぜい俺らを楽しませてくれよ。」


『あと少しだけ辛抱してくれ。今そちらへ向かっている。』


『黎明、早くしておくれよ?こちらはかなり、ピンチと言ったところなのだから。』


モニタールームで監視しているだけの自分が情けない。能力やスパイとしての資格がある人達はああやって戦っているのに。


私は見ているだけなんか嫌。何のためにスパイ学校に入ったの?

走れ、仲間の元に。

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