僕のワクワク大作戦・少年編 第9話〈前編〉:初めての釣り 〜サメがいた、かもしれない海〜

@takapapa0716

第9話

【前書き】


“初めて”が詰まっていた、あの夏。

空も、虫も、街も、そして──海も。


今回は、そんな「初めての海」と「初めての釣り」に挑んだ僕たちの冒険譚。

ノスタルジックで、ちょっぴり危なっかしい“少年の一日”を、笑ってお楽しみください。



【本文】


「釣り、行こうぜ!」


そう言い出したのは、食いしん坊のちいぼうだった。

狙いはもちろん、“釣ってその場で食べる”こと。なんとも彼らしい。


海も釣りも初体験の僕は大賛成。

さっそく親にねだって、初心者向けの釣り竿セットを手に入れた。

胸の高鳴りは、すでにMAXだ。


日曜日。みんなで集まり、自転車をこいで海へ向かう。

ゆらゆらと光る潮風に吹かれながら、20分の道のりを笑いながら進む。


ついに釣り場に到着。

釣り竿を組み立てながら、ふと横を見ると──


「おいマメ、それ……短くない?」


マメの竿は、お子様ランチの旗みたいなサイズ感だった。

釣竿まで“マメサイズ”とは……全員で吹き出した。


潮の香りを初めて吸い込む。

胸いっぱいに深呼吸して、いざ──釣り、開始!


「来たっ!」

引きがあった。けど……


……フグ。


「また来た!」

……フグ。


「うそだろ……また!?」

……やっぱりフグ。


フグ、フグ、フグ、フグ──フグ祭り。


隣のベテラン風のおじさんたちは、鯵やカサゴを次々に釣り上げてる。

こっちは全員フグ。これはもう……道具の差ってことにしておこう。


「これ、食べられないのかな?」

ちいぼうが言うけど、いや、それはマズい。

なんか目つきもヤバいし……。食中毒で夏休み終了はゴメンだ。


気を取り直して、僕たちは場所を変えることにした。

歩いて向かったのは、近くの漁港。

漁師のおじさんたちが、ちょうど魚を荷揚げしている。


氷の中から出てくる魚たちは、どれもピカピカでかっこよかった。

その中で、ひときわ僕の目を引いたのが──


サメ。


それも、頭だけがぎっしり詰まった箱だった。


「なんで頭だけ?」

思わず聞くと、おじさんが答えた。


「身はカマボコになる。頭は使い道がないから捨てるんだよ」


そう言って、おじさんはその箱を持ち上げると──


「邪魔だな」


そうつぶやき、なんと箱ごと海にドボン!


どぼーん。

ずしん。

ぶくぶくぶく……


そして次の瞬間──


海が真っ赤に染まった。


「うわっ!」と驚いて立ち上がった僕は、ふらついて……


バランスを崩し、そのまま──


目の前の赤い海へ、ぐらりと──



【後書き】


ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


フグだらけの釣り。

サメの頭が浮かぶ港。

そして、真っ赤に染まる海──。


“初めて”の体験は、どれも刺激的で、ちょっぴり危険で、だからこそ忘れられない。


でも、このあと僕たちは、最大のピンチを迎えることになります。

次回、後編では……いよいよ“海の中”の出来事へ──!

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