第6話 鬱憤

 スマートフォンの攻略者補助アプリ「ラパ」の地図アプリを開いてみると、すぐ近くにダンジョンが発生したのを見つける。

 神外はすぐにオープスをつけた。

 配信をしようというのだ。


 ●うわでた

 ●今日もやるのか

 ●学生そうなのに暇なのね。部活はやらないのかしら

 ●部活やる学生こそ少ないでしょ


 ダンジョンに潜り込むと、そこは海のようだった。

 海仕様のシースライムというスライム型モンスターが現れたら、間髪入れずに核を破壊する。

 シーゴブリンも間髪入れずに首を叩き切る。

 ちなみに神外は剣を持っていないので、気合いを込めて頑張って手刀で斬っている。

〈肉体強化〉で行える事は筋力の強化だけではない。

 そう、皮膚の硬度も強化しているのだ。


 ●躊躇いがなさすぎる

 ●戦闘マシーンすぎるだろ


 第2層に進む階段をみつけるので、そこを向かおうとすると、シーゴブリンの軍団が遅いかかる。

 いくら強くたってさすがにこのかすはいけないだろ。

 と、誰もが思うかもしれない。

 しかし、そう思わない者もいた。

 神外である。

 シーゴブリンは40体、悪魔の咆哮とめどなく。

 ──握れる拳はふたつだけ。

 シーゴブリンの軍団に歩みかかった神外の拳には〈肉体強化〉の影響でスパークする魔力が滾っている。

 ドコ、バキ、ギャア、とシーゴブリンが音楽を奏でる。

 まるで知能のない音楽隊だ。

 その影響でコメント欄も盛り上がる。


 ●ヒェッ……

 ●なんで単独でその数の海ゴブと渡り合ってんだよ

 ●怖すぎるだろ

 ●怒らせたらヤバそう

 ●なんで無表情なんだよ

 ●草

 ●こいつもしかしてS級攻略者いくか?

 ●年内に行くだろうな


 シーゴブリンの討伐を完了させると、第2層に続く階段が消滅。次第に海が赤く染まっていく。

 神外はその様子を眺めながら、「ほほう」と呟く。

 それは、「狂化」という現象である。

 ダンジョン内でモンスターが大量発生するのだ。


 ●なんで冷静なんですか

 ●危機感を持て

 ●感情壊死してんのか?

 ●ほほうじゃないが

 ●逃げろ

 ●こいつもしかしてコメント見てねぇな?


 神外は拳を構えた。

 そして、大量発生したモンスターたちに襲い掛かる。

 神外の〈肉体強化〉という異能には色々な仕様がある。

 まず部位。腕部・胴部・脚部・頭部など。

 そして、モード。皮膚の硬度強化や筋力強化など。

 最後に、強化の段階。第1段階は簡単な火事場の馬鹿力で済むが、第2段階は魔力のスパークが起こる。第3段階になると、身体中に唐草模様が浮かび上がる。それ以上は行ったことがないため分からない。

 現在、第2段階である。


 ●強すぎ

 ●なんだこの動き!?


 シーゴブリンの頭を殴りちぎると、シースライムに向けて放ち、砂煙が立ったところで的確に見えていないはずの核を狙い打つ。

 ブルーシャークというモンスターが襲いかかる。

 その攻撃をすべて見切り、眼球に思い切り腕を突き刺し、地面にたたきつける。


「よわい」


 ●お前が強いんだよ

 ●こいつの等級なんだっけ

 ●プロフィールみたらGだった

 ●G級でこれかぁ……

 ●ほかのG級がかわいそうだ

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