第一話「崩れる前の日々」
この国では6歳になるとある木の実を食べる。
それは、私たちが使用している異能力を強化するもので、とても赤くて丸い。甘くてみずみずしいそれを、初等部に入学する6歳の誕生日に食べるのだ。自分のこぶしよりも大きい木の実を一人で食べきらなければならない。その木の実を食べる神聖な部屋で、神官様に見守られながら。
当然私もその木の実を食べた。何も知らないまま、教会に連れていかれ、幼馴染のレオン・フィズと共に神官様に預けられた。レオンとは何の縁か、誕生日が同じで親同士が知り合いということもあり、よく遊んでいた。先にレオンが部屋に入っていき、私は大人しく別の部屋で待つ。どれぐらい待ったのかは分からないが、レオンが部屋から出てくると次は私の番だと、手を引かれ部屋に入る。
そこは白くて、小さな机と椅子、机の上には赤い木の実が置いてあった。なんだかわからず、まじまじとその木の実を見ていると、神官様から食べなさいと言われ大人しく座ってその木の実を一口齧った。甘い。美味しい。レオンもこれを食べたのだろうか。とにかく夢中になってそれを食べた。気が付くとそれはもうなくなっていて、神官様は私の口元を拭うと、また手を引いて部屋から私を出す。まだ食べたいと思ったが、私が部屋から出てくると駆け寄ってくるレオンを見て、あの木の実のことを伝えなければと私も走り寄った。そして、二人で同じことを経験したことを知れば、話題はどんどん移り変わり、いつの間にか両親が迎えに来て、レオンと次に会う約束を取り付けてその日は終わった。
それから時が経ち、私たちは高等部に進学した。無事に異能力も開花し、レオンは言霊を私は重力を操ることができるようになった。レオンは人を笑わせることが好きで、その性格と強力な能力をお偉いさんに買われ、ヒーローとして活動もしている。私もスカウトされたが、面倒くさがりなため申し訳ないが断った。レオンを経由して他のヒーローとも仲良くなり、高等部生として学園生活を満喫していた。
しかし、そんな日常は崩れ去ってしまった。
※第二話は今夜21時投稿予定です。
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