私は怪談を人から聞くのが好きでしてね。

変な人でしょう？

よく言われます。

でもなんかね、昔から好きなんですよ。

でね、Barに行ってなんとなく仲良くなったお客さんにちょろっとね。

変な体験ありませんか？って聞いてみると、結構良いものが聞けるんですよ。

で、だんだん話のストックができてくると、そこでちょっと、興味持ってくれるような人をみつけて話したりしてね。

で、そういう事をしているうちにマスターも面白がってね。

怪談会、ってほどじゃあないんですが。

私に話をくれた人とか、同じような趣味の人間が集まって酒飲みながら話すような場がね、できたりしたんですよ。

そういうのが始まって、3年くらいにはなるのかな。

ある時、こういう話をしたんです。

その、私に話してくれた女性が言うにはですよ。

自分の部屋の中で、自分が立っている夢を見たんだそうです。

夢です、夢。

その人は初めて、いわゆる明晰夢を見たんです。

あ、夢だこれ、ってはっきり思ったそうなんですが、なぜか暗い自分の部屋でぼんやり立っている。

身体を動かして部屋の明かりをつけようとか思っても、動かない。

夢の中で金縛り？へんなの〜とか思いながら立ってたら、後ろから気配がする。

誰かがすぐ後ろに立って、ずっと自分を見ているっていうか眺めているっていうか。

まあ、誰かがいるのは分かるんだけど、男なのか女なのか。

そういうことも一切わからない、とにかく誰かいる。

なんだろう、怖いかも？って思ってたら後ろの人が

「目が覚めたらやってやる」

って言ってきた。

男の声だったそうです。

うわあ怖い！って思ったらハッと目が覚めて、自分の部屋のソファでうたた寝していることに気がついたと。

そうか夢だったよねぇって思って、時計をみたら夕方の5時をまわっててね。

お買い物行かなきゃって思って立ち上がったら

「聞こえたよな？」

って、夢の中で聞いた男の声が後ろから。

えっ⁉︎

って思った瞬間、頭に激痛が走って。

そこから記憶がないそうです。

で、気がついたら病室だったそうです。

くも膜下出血でした。

気を失って倒れていた所を、帰ってきた中学生の息子さんが見つけてくれましてね。

救急車を呼んでくれて事なきを得たということなんですね。

その女性言ってましたよ。

病気が起こる前ぶれでみた、幻覚なのか。

何か悪いものに、通り魔のように悪さをされたということなのか。

どっちなんだろう、って。

いやあ、なかなかに興味深い話ですよね。

この話をみんなの前で披露した時、その体験をした女性もいましてね。

非常に喜んでくれたんですが。

そしたらリクエストされましてね。

中学生の息子さんが、忘れちゃったからもう一回聞きたい話があるって。

どうもその女性、私の話をいろいろその子に話しているみたいなんですが。

学校のジャングルジムの所に出た女の子の話を、もう一回聞きたいって。

私のネタ話したんだから良いじゃないですか、お願いですって言われて。

そうですかあ？なんて私もその気になっちゃってね。

リクエストされるなんて、ちょっと嬉しいじゃないですか。

で、その話をしたんですよ。

かいつまんで話しますと。

ある中学校で、どうもいじめが原因で亡くなった女の子がいたと。

ジャングルジムにビニール紐を引っ掛けて、首を括って、自ら、ね。

それから、そのジャングルジムは撤去されて。

いじめの事はうやむやにされて、その女の子の家族も地元を去って。

まあ、なあなあの中で忘れ去られようとしていたのですが、そのいじめた生徒らが卒業する時にあらわれて復讐するといった、そんなような話なんです。

それからというもの、そのジャングルジムがあったとされる場所にその子が佇んでいる、なんていう締めなんですよ。

その話もリクエストしてくれた女性や他の人達に、それなりに喜んでいただいて。

その会は終わったんです。

終わった後、マスターと話しながら少し呑んでたんですがね。

そしたらマスターが

「あのジャングルジムの話、とうとう話したみたいだね？」

って聞かれてあれっ？て思いまして。

話自体はあるんですよ、私のストックに。

でもその話、マスターの体験談でして。

私、誰にも話していなかったんですよ、もちろんマスターも。

後でそのことを聞こうとしたんですけど、その女性それっきり来てないんですよね。

なんで知ってたんでしょうね？