クライスト

Zamta_Dall_yegna

第1話 彼の名はクライスト

 私立ミルラ学園と呼ばれる学園で、俺は高校生として学園生活を送っていた。主席でもなんでもない俺は、数少ない友人たちと有名な小説を片っ端から読んでいた。友人たちはアーサーやエラリィの紡いだ話に夢中だった。俺も一通りその話を読んでみたが、何かが物足りないといつも心の中で思っていた。そして、俺なりの快楽をもとめて色々な作者の小説を読み歩いていた。


 朝起きて、寮の同居人を起こして始まる生活に不満は無かった。だが、ちょっとしたハプニングをもとめてはいた。非日常というのは、平和な日常であるほど欲しいと思うものだ。自分のサプライズにと、普段関りのないけれど有名な同級生に話しかけることにした。彼は白い肌に赤い瞳を持っており、常人離れした美しい容姿の男だった。アルビノと呼ばれる体質のせいか、普段は長袖長ズボンに身を包んでおり徹底的に日焼け防止対策をしているという。中身も相当変わり者らしく、友人から聞いて知った。いつか会ってみたいと思っていたので、いい機会だと思う。今日は丁度休みの日なので、余程のことがない限りすれ違いはないだろう。俺は早速彼の部屋へと向かった。


 彼の部屋は、寮の2階の角部屋だった。勢いで来てしまったが、どういおうか。部屋の前で迷っていると、後ろから声をかけられた。

 「そこは僕の部屋だけど、僕に何かようかい?」

 白い肌に赤い瞳と唇がくっきりと浮いて見える。彼が俺の会おうとしていた人物だろう。

 「ああ。アンタのことを友達から聞いてね。少し話をしないか?」

 「いいよ。さ、立ち話も何だから上がってよ」

 俺は彼に案内されるがままに部屋の中へ入って行った。ぐるりと見回すと、恐ろしい程何も無かった。壁は真っ白で汚れがなく、家具は備え付けの机とテーブルと椅子、それから本棚があるくらいだった。本棚には、推理小説がいくつか入っており他は教科書がほとんどだった。ベッドが一つしかないことから、恐らく一人部屋だろう。

 「いきなり、悪いな。俺はチャールズっていうんだ。よろしく」

 「僕はクライストだよ。よろしくね」

 握手をしてから俺は椅子に、彼はベッドの上に腰かけた。俺は、先程目に入った小説が気になったので、聞いてみた。

 「アンタ、推理小説が好きなのか」

 「うん。面白いからね。君は何を読むんだい?」

 「俺も推理小説は読むぜ。とくにアガサのが気に入ってる」

 すると、彼は目を輝かせて身を乗り出してきた。

 「へぇ!実は僕もなんだ。彼女の書く降霊術の回が好きでね」

 「ああ、あれか。心霊姉妹が出てくる奴だろ」

 「そうそう」

 そうして日が暮れるまで、俺たちは小説の話で盛り上がった。


 夜の帳が下りるころ、俺はクライストと別れた。自分の部屋は3階にあるので、階段を使った。手すりが光って見える。なんだか汚い気がしたので、手袋を付けてから階段を上った。


 

 

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