第14話

 応接間につくと、私たちはソファに腰掛けた。リアムは当然のように私の隣に座り、祖父に若干睨まれていた。


 祖父の視線に構わず、リアムが楽しげに尋ねてくる。


「本当に久しぶりだね。スカーレット、かなり忙しかったみたいだけれど今年は時間が空いたの?」


「今年はというか、今年からはもう忙しくない日が続くかもしれないわ」


「本当に? 魔術師団の団員が増えたとか、新種の魔道具が開発されたとかかな? なんにしろスカーレットに休む時間が出来たのならよかった!」


 リアムはにこやかに言う。私は静かに首を横に振った。



「いいえ、違うの。実は私王子殿下に婚約破棄されてしまって。もう結界を張る手伝いはしなくていいと言われたのよ。まぁ、自由な時間が増えたのには変わりがないのだけれど」


 しんみりしないように出来るだけ軽い口調で告げる。


 しかし全く効果はなかったようで、リアムの顔がみるみるうちに引きつってきた。



「……どういうこと? 婚約破棄された? 解消ではなく? それは、ダリウス王子が一方的に婚約を破棄してきたってこと?」


「ええと、まぁ。そういうことになるかしら」


 気まずい思いでそう告げる。


 リアムは口を閉ざして黙り込んでしまった。



「リアム君が憤るのもわかるよ。私たちだってスカーレットが蔑ろにされたことにはまだ納得がいっていないからね」


「本当よ。ダリウス殿下は学園にやってきた転入生の少女を気に入ってスカーレットとの婚約を破棄したと言うのよ。長年の婚約者をそんなことで切り捨てるなんて信じられないわ」


 沈黙する私たちに変わるように、祖父母が不満顔で話す。


 黙り込んでいたリアムがようやく顔を上げ口を開いた。


 リアムは私の手を両手でぎゅっとつかんで、真剣な顔で言う。



「スカーレット、僕と結婚しよう」


「えっ?」


 突然のリアムの言葉に頭が追いつかなかった。


 なんのつもりだろう。冗談だろうか。しかし、リアムの表情は至って真剣だ。


「何を言ってるの、リアム?」


「ダリウス王子との婚約がなくなったのなら構わないだろう。僕ならそんな恩知らずの王子より、ずっと君を幸せにしてあげられるはずだ。スカーレット、子供の頃からずっと君が好きだった。僕と結婚してくれ」


「本当に何を言ってるの!?」


 私は焦って聞き返す。


 祖父母も私同様相当驚いているようで、呆けた顔をしてこちらを見ていた。


 しかし祖母は急に目を輝かせて、嬉しそうに両手を合わせる。



「それはいいわ! リアム君なら私たちも安心ね! スカーレットとリアム君の縁組なんて、夢のようだわ!」


「い、いや、待て。落ち着きなさい」


 はしゃいでいる祖母を、祖父が慌てた顔で止める。

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