400字の森
淡路結波
指
昨日、右手の人差し指がじんわりと熱をもっていた。
とくに怪我もしていないし、ぶつけた覚えもない。
どうしてこんなふうになったのか、思いあたる節もなかった。
風邪でもひいてるのか、それとも何かを予兆しているのか。
無性に不安になった。
熱源のあたりを注意深く見てみると、
爪の生え際が、なぜか少し赤くなっているように見えた。
気になって、指の腹を親指の爪でそっと押してみる。
ほんの微細な痛みが、芯から染みるように走った。
なんだろう。
どうすれば治るのか、まったくわからなかった。
夜は静かで、聞こえるのはエアコンの音と時計の針だけだった。
ゆっくりと布団に入ると、指が枕に触れないようにして眠った。
朝起きると、痛みはなくなっていた。
何事もなかったように、指は元に戻っていた。
私は助かったのだろうか。
それとも、何か大切な糸口を見逃してしまったのだろうか。
400字の森 淡路結波 @yu-Awaji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。400字の森の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます