処刑された大貴族の三クズと呼ばれた悪役に転生したが死ぬのは嫌なので真面目に生きてみようと思います

刃口呑龍(はぐちどんりゅう)

第1話 処刑

 えっ! ここどこ?

 

 ある朝起きて目を覚ますと見慣れない光景が広がっていた。広場だろうか? 見渡す限りに、人がいて口々に怒鳴っていた。しかも、その人達の格好は、どう見ても現代日本人の格好ではなかった。あまり詳しくないが、中世ヨーロッパの人達ってこういう格好なのかなという服装だった。

 

 いやっ、服装だけでなく、広場の向こう側にある建物もコンクリートの建物ではなく、石造りのそんな高さのない建物ばかりだった。その前にある道も石畳だし。

 

 そして、なんでそんなに良く見えるのかと言うと、俺はやや高い木の台に座らされていた。しかも、後ろ手に縛られさらに、前傾姿勢になるように全身を縛られ動けないようにされていた。で、その台の上には俺以外にももう二人いた。

 

「た、助けてくれ……」

 

「に、兄ちゃん……」

 

 どうやら他の二人は兄弟のようだった、

 

「早く殺せ!」


「死ね死ね死ね」

 

「三クズ〜」


 三クズ? どうやら広場に集まった人達は、三クズという奴らの処刑を見に来たようだった。どこだ三クズは……?


 って、俺達か〜!


 そう言えば、俺達三人の両隣には、斧を構えた二人の甲冑を着た兵士らしき人が立っていた。そうか、三クズか〜。そんな風に呼ばれるなんて俺何を悪い事したんだろ?


 って考えるが、特に記憶がない。えっ、何で? 転生っていうのか? こういう時って、普通は記憶が蘇って何か助かる方法が……。って、すでに手遅れか〜。すでに、処刑寸前だった。


 えっ、どうしよう?

 

「え〜と、助けてくれません?」

 

「けっ、今まで散々俺達を苦しめといて、最後まで往生際の悪い野郎だぜ」

 

「ああ、自分達が何をしてきたかって認識がねえんだろうな」

 

「ああ、虫唾むしずが走るぜ」

 

「さっさと、殺しちゃうか?」

 

「いやいや、こいつらの最後の見せ場だ、ちゃんと殺してやろうぜ」

 

「ゲヘヘ、違えねえ」

 

 なんて両隣の兵士が話されてる。兵士達が、話している間も、良くいだのであろう、見上げた俺の目にキラキラ輝く斧が目に痛い。

 

 そんな時だった。一人のまだ年若い青年が俺達の前に進み出る。若き才気さいきあふれる好青年という感じだった。美しい金髪のサラサラの髪に美しいブルーアイ。

 

「私は、ロレンツォ・ミナモートである」

 

「わ〜。ロレンツォ様〜」

 

「ミナモート様〜」

 

 ミナモート? どこかで聞いた事があるような?

 

 ロレンツォが、静粛せいしゅくにとでもいうように手を掲げると、広場はシーンと静まる。

 

「タイラー大公家の者達は、すでにほとんどが粛清しゅくせいされた。残るはここにいる三人。アレッサンドロ・タイラー、フェルディナンド・タイラー、ジョバンニ・タイラーの皆の言うところの三クズだ!」


「死ね〜、三クズ!」

 

 タイラー? タイラー? あっ、思い出した。昔やった事のあるシュミレーションゲームの登場人物の名だ。しかし、ちゃんとやっていない。細かい所までは覚えていないな〜。

 

 クソゲーオブザイヤーに選ばれるくらいの作品で、四人の主人公を選び圧倒的支配地域を持つタイラー大公家に反乱を起こすのだが、圧倒的戦力差で絶望感しかない状況だった。


 しかし、タイラー大公家の三クズが勝手に足を引っ張って、タイラー大公家に対する民衆の恨みが爆発。勝手にタイラー大公家は崩壊し、ゲームは1年で終わってしまうというクソゲーだった。


 頑張って長く遊ぶには、主人公側が馬鹿な事をやり続けるしかないのだが、そうすると今度はタイラー大公家側が民衆の反乱を鎮圧して終わるというどうしようもないゲームだった。


 しかし、架空の歴史で舞台は中世ヨーロッパで、源平の戦いがおそらくテーマなんだろうが、ミナモートってwww 名前がダサすぎる。それに、西洋風なのか、和風なのかはっきりしてほしいものだな。


「飢えている民がいるのに、自分達だけは贅沢三昧ぜいたくざんまい。あまつさえ、傘下さんかの国々から若い姫達を無理やり徴集ちょうしゅうし、非道なる行為に及ぶ。特にだ、ジョバンニ・タイラー!」


 ロレンツォさんは、俺を見て睨む。


 えっ、俺?


「我が婚約者である、マリア・ホージョーを奪った……。許せん」


 すると、若い綺麗な女性がロレンツォさんの隣に立って、俺を睨む。えっ、俺何もしてないけど……。


「非道なる者に、死を」


「水晶の姫になんて事を!」


「殺せ殺せ殺せ殺せ」


 ロレンツォさんは、広場の人々の怒声を軽く手をあげて制すると。


「アレッサンドロ・タイラー、フェルディナンド・タイラー、ジョバンニ・タイラーの三名を斬首に処す。やれっ!」


「はっ!」


 兵士が斧を振り上げる。


「えっ、ちょっと待って……」


「うるせぇ」


 ちょっとこんなやり取りをしているうちに、アレッサンドロとフェルディナンドの兄弟の首が切り落とされ、首が転がり、血が噴き出す。


 そして、俺にも斧が振り下ろされる。


 ザシュッ!

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