第5話 エピローグ

 自宅。


 カマボ魚は、わたしの部屋の水槽でのんびり泳いでいる。いざ持ち帰ってみると、情が湧いてしまい、かまぼこで食べてしまうことに抵抗を覚えたからだ。


「何も考えてなさそうな顔ですね。まあそれ故に愛嬌がありますが」

 クロは寝床のクッションの上で丸まりながらカマボ魚を見ていた。

「まあ、豚とか鶏を飼う人もいるだろうから、コイツを飼うのも別に変じゃないだろう」

 わたしは机で冬休みの宿題をやっていた。今回の件でまるで進んでなかった。


「ひょっとしたら前からこの魚はいたのかも知れませんね。大昔の人が偶然この魚を捕まえて食べたら、あまりに美味しかった。だから、あの味をもう一度食べたくて、他の魚の身をすり潰し、形を真似て、必死に味を再現しようとしたのが、練り物文化の始まりだったのかも」クロの仮説は宿題を脱線させる。

「もし、そうだったら何百年も経ってオリジナルのかまぼこに戻ったということなのかな?」

 わたしの意見に最早関心がなくなったクロはあくびをしている。


「そう言えば築地のこんにゃく美味しかったな〜」そこでわたしはまたも、疑問の迷宮に入り込んだ。


「こんにゃくって何で出来てるんだろう?」




 おわり

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