第3話 部長とナンパ
「じゃあ、とりあえず、部員紹介でもしよっか」
目の前の男、相原は悠々と立ち上がると右手を自分の胸に当てて話し始めた。
「まず、部長はこの俺、2年B組相原ひとね。よろしく。で、まあ…以上だ!」
「はあ…、っ、え?…以上⁉︎」
俺は、思わず椅子から転げ落ちそうになった。え、嘘だろ…。もしかして、部員コイツだけなのか…。いや、そんなまさか。
「部員俺だけなんだよね〜」
最悪だ!
と、いうことは俺はこれからコイツと二人だけでナンパをしないといけないのか?最悪だ!何が楽しくてこんなやつと…。
「マジ人手不足だから困ってたんだ〜」
彼にとって俺の入部は決定事項の様で、鼻歌交じりに山積みになったプリント類をいじっている。時折、それらが崩れて床に散らばった。
「…あった!はい、これ入部届」
そして、ようやく見つけだした一枚を俺の前に突きつける。相原は再度、よろしくね、と微笑んだ。しかし、その笑顔の裏には確かな圧力があった。
その圧に気おされて、渋々入部届を受け取る。こんなやつと二人で部活動か。憂鬱だ…。
しかし、俺は心の奥ではそれほど悲観していなかった。
部員が居ないなら…増やせばいい!
簡単なことだ。きっと今はまだ入部していない一年生が沢山いる。その人達をナンパ…いや、勧誘してこの部活に入れる。
そうして、ナンパ倶楽部はそいつに任せて俺は早々に退部する。なんてスマートな考えだろう。
題して、ナンパ倶楽部増員大作戦!
部員を増やすことには相原も賛成のようで、俺達は早速勧誘に向かう事になった。
こうして、この作戦はスムーズに進むかと思われた。が。
俺は、重大なことを忘れていた。
ナンパ倶楽部は、側から見るととても怪しいという事だ…。
「ナンパーナンパに興味ありませんかー」
俺達が、ナンパ…いや、勧誘を始めてかれこれ一時間。
始めは辺りに沢山いた一年生達も、部活の見学を終えて帰りだしている。話し声も段々と少なくなってしまった。
「はぁー全然ダメ。マジ疲れたー」
相原は諦めたのか、遂に座り込んでしまった。俺もそれに続く。
やっぱり、ナンパ倶楽部に自主的に入りたい人なんて居ないのだ。俺だって出来れば入りたく無かった…。そもそもナンパ倶楽部って何だ?ナンパなめとんのか。
はぁ、と溜息をついて辺りを見渡す。
校舎はもちろん、倉庫やグラウンドまで綺麗に整備されているのが見える。そこには、サッカー部らしき人々が部活に励んでいるのが見えた。
いいな…。
そういえば、俺の幼馴染がサッカー部に入りたいとか言っていた。そいつがスポーツで青春をenjoyしているというのに、俺はチャラ男とナンパか…。泣きそう。
ぼーっと辺りを眺めていると、校舎から何人かの生徒が出てくるのが見えた。
何かが、違う。
その生徒たちを見た瞬間、俺はそう思った。明らかに、他の生徒よりと雰囲気が違う。物凄いスマートオーラだ。
「げっ」
相原は、その人達を見ると、慌てて逃げようとした。俺を置いていくなよ!
「!」
「あー貴方達、ナンパの…‼︎」
しかし、その前に向こうの生徒に気づかれてしまった。どう考えても俺達を指差して何か怒っている様だ。
「誰なんですか、あの人達…?なんか、めっちゃ怒ってますけど、あなた何やらかしたんですか…?あと、俺を置いていこうとしないでください!」
俺はなおも逃げようとする相原のジャケットの裾を掴み、矢継ぎ早に問いかける。こいつ、意外と力無いな!
「あいつらは…生徒会だ!」
ドキドキ☆ナンパ倶楽部〜超平凡な俺が一流ナンパ師に⁉︎〜 しゃも @Yawa0125
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