ドキドキ☆ナンパ倶楽部〜超平凡な俺が一流ナンパ師に⁉︎〜
しゃも
春とナンパ
第1話 入学式とナンパ
「えーおにーさん、ちょーかわいーぢゃん」
「うちらと一緒にお茶しなーい?」
肌の焼けた、金髪の女子高生が俺の周りを取り囲んでいる。多分校則違反であろうピアスに、同じく違反の異様に短いスカート。そして、その全員が俺を見下ろしている。
なぜ、こんなことに…。迫り来るギャル達に返事も出来ないまま、俺はじりじりと後ずさった。
ことの発端は、少し前まで遡る。
俺は、今日から華の高校生になる雨宮蒼、十五歳。しかも、名門校と名高いあの私立スマート高校に入学したのだ。これから、どんな日常が待ち受けているのか、考えただけで心が弾む。思わず鼻歌を歌いながら上機嫌で玄関のドアを開けた。
「行ってきまーす」
私立スマート高校。この、スマート町屈指の進学校だ。地元ではかなり有名で、近所のおばさんに噂されるほどの知名度を誇っている。昨日だって、向かいの酒井さんに『あおちゃんは賢いのねぇ』と褒められたばかりだ。ちょっと照れくさいけど、悪い気はしない。
高校についたら、何をしようか。もちろん、勉強はするけれど、遊びもしたい。そして、何より大切なのは…部活動!
これまでは真剣に部活に行っていなかったから、高校では絶対興味のある部活に入って青春を送るんだ!
とは言ったものの、何部に入ろうか。サッカー部、テニス部、バスケ部、美術部、科学部…。
どれも、青春出来そうではあるが、いまいちピンとこない。俺にはこれといった趣味は無いのだ。これでは、中学校の二の舞になってしまう…。
どうしたものかと考えているうちに、校門が見えてきた。その奥には、日に照らされて白く光る校舎が見える。中学の錆びついたボロい建物とは大違いだ。
俺が、期待に胸を膨らませて、敷地に足を踏み入れようとした、その時。
「ねーねー、そこのおにーさん」
何者かに呼び止められ、俺は振り返ってしまった。見ると、他校の生徒だろうか。見慣れない制服を身に纏った少女達がずらりと並んでいた。
「新入生の子だよねー?」
「へー?結構かわいーぢゃん」
そして、俺はなす術なく取り囲まれてしまったと言うわけだ。無念。
「えーっと…俺、今日は入学式で、すぐに行かないといけなくて…」
「えーちょっとぐらいいーぢゃん」
そして、俺の言葉が届く訳もなく、ギャルのうちの一人が俺の腕を掴んだ。
これは…まずい!
入学早々、こんな目に遭うなんて。しかし、俺は手を振り払うことができずにいる。非力とかいうな!
もう、この人達について行くしか選択肢がない。半ば引きずられて行くような形で、少しずつ校門から遠ざけられていく。あぁ、さようなら、俺の青春…。
「ちょっと待ったー‼︎」
俺が最早死を覚悟した、その時、何者かが朝日を背にして立っていた。スラリとしたスラックスとジャケットに身を包み、胸元にはキラリと輝く校章をつけている。間違いない、あのスマートさはスマート高校の生徒だ。
「俺の弟になんか用?」
その男は軽薄そうな笑みを浮かべて女子高生に問う。しかし、その瞳には鋭さが宿っており、全てを射抜いてしまうかの様な獰猛さを帯びていた。
一瞬、場に沈黙が訪れ、緊張が走る。ギャル達はチッと舌打ちを打つと、今日のところはこれくらいにしてやるよ、と捨て台詞を吐いて踵を返して走っていった。模範的な悪役だ…。
「大丈夫?ごめんね勝手に弟とか言って」
「あ、はい…ありがとうございます」
男は、先ほどは逆光で分からなかったが、そのスマートさに反して非常に軽々しい印象を与える格好をしていた。髪の毛は茶色に染まっているし、第一ボタンは開いており、銀色のネックレスを付けている。
男は俺の返事を聞くか聞かないかのうちに、じゃあ、と手を振って校内に入ろうとした。
「ま、待ってください!」
「ん?」
「何か、お礼を…」
言い終わる前に、彼は俺を手で制した。しかし、助けて貰ったままというのは心残りがある。俺がなおも食い下がると、彼は少し思案し、何やら名刺のような物を胸ポケットから取り出した。
「君…ナンパって興味、ある?」
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