『歯車』を読んで
『歯車』というのは、芥川龍之介の書いた短編小説である。
―狂気に落ちるまでの過程、死への誘い、精神病による苦痛を描いている―
感想として、このような内容のものが書かれているのを見たことがある。
僕としては、自己分析や自己の思いを書き起こすために書いたものではないかと思っている。やけに客観的、やけに無感情な文体に感じたからだ。
狂気や恐怖、不安や苛立ちがないまぜになって表現されているが、要所要所にある疑問が目立つ。「なぜ~だろう?」などと考える余裕がある時点で、なにかおかしいことに気づいている上、狂気に陥っていないことを示しているように思える。自分がなんでもかんでも死と思考を結び付けようとしていることに気がついている。正気なのだと思う。
人々の望みに答えられないという自己肯定感の低さによって悩みが尽きないこと。自身を蝕む病気や先が見えている暗い未来に絶望を覚えているのではないか、死を望みつつ自分では怖くてできないという思い。人の手によって楽になりたいという我がままは、依存するものが何もない故の苦しみであること。それを分析していたのではないかと考えている。
そこから、狂気で痛みや苦しみを感じず、今までの悪しき素行を忘却し、清廉潔白なまま死にたいというのが彼の強い望みだったのではないかと推測した。狂気に陥れば楽なのにそれすら出来ない。そんな苦痛が嫌で見知らぬ人間の手にかかりたいと望んでいた。
『僕はもうこの先を書きつづける力を持っていない。こう云う気もちの中に生きているのは何とも言われない苦痛である。』
やはり彼は最後まで狂気というものには手が届くことはなかったように思う。生きる力がないと判断でき、苦痛を感じている。苦痛から逃れたいと言っている。死人が死なないように、狂気の中にいるのであれば、狂気を求める必要はないからだ。
物書きが書いた読書感想文 Zamta_Dall_yegna @Zamta_Dall_yegna
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