名前を呼ばなくなった朝

@ramemmo

序章 プロローグ

私の唯一の家族だったお姉ちゃんが死んだ前日はすごく平穏だった。

お姉ちゃんは社会人で働いていたが、仕事や人間関係がうまくいかず、家にいるときは泣いてて、最終的には表情も消えかかっていた。

暗闇の中で電気もつけない部屋に閉じこもっていた姉が死ぬ前日は今までが嘘であったかのように笑っていて、朝ごはんに味噌汁とおにぎりを振舞ってくれた。

味噌汁は味が薄く感じ、おにぎりは形がおにぎりとは呼べないほど原形をとどめていなかった。

「おいしいよ!」

私は涙を流しながらお姉ちゃんにそう伝えると、

「私のはちょっぴり味が薄いね」

と言われた。


次の日仕事に通勤すると言って仕事場の反対側の山奥で首を吊った。

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