クローバー?しゃべる

 四葉のクローバーを見つけた。

 見つけたときのまま、根っこごと引き抜いて、小さな植木鉢に植え替える。

 四つに分かれたかわいらしい葉っぱを見ながら、思わずにんまりした。


「クローバーちゃん、幸運を運んできてね」


「あの……すみません」


 え……?


「あの……話したいことがありまして……」


「何、誰!?」


 急に声が聞こえて、心臓が跳ねた。

 自分以外誰もいないのに、すぐ近くで誰かが話している。


「あ、あの……自分、ここです。植木鉢に植えてもらったものです……」


「へ!?」


 視線を落とすと――

 さっき植え替えたばかりの、四葉のクローバーが、まるでお辞儀をしているように見えた。


「この度は、拾っていただきありがとうございます」


「あ……どうも……」


 いや、何これ。

 なんでクローバーがしゃべってるの?

 何かのどっきり?

 私はカメラを探すように部屋を見回した。


「突然話してすみません。驚きますよね……」


「あ……はい。驚きました……」


 なんか、礼儀正しい。妙に。


「本当はしゃべるべきじゃないんですが……どうしても、お伝えしたいことがありまして……」


 クローバーは遠慮がちに話す。

 動かないはずなのに、なんとなく“もじもじ”しているように見える。


「伝えたいことって、なに?」


「あの……実は……」


 そのとき、不意にスマホの着信音が鳴った。


「あ、ごめん。ちょっと待っててくれる?」


「はい。わかりました……」


 スマホを手に取ると、親友からの電話だった。


「ちょっと聞いてよ! 推しのコンサート、ライブ当たったんだけど!」


「えー!? いいなぁ! 私も行きたーい!」


「でしょ!? しかもね、チケット二枚当たっちゃってさ。あんたも一緒に行こうよ!」


「いいの!? やったー!!」


「じゃあライブの日、予定あけといてよね〜」


 通話を終えて、私は大喜びだった。

 親友と一緒に、ずっと憧れてた推しのライブに行けるなんて!

 テンション爆上がりで、思わずクローバーに向き直る。


「倍率高いライブに行けることになったよ! さっそく幸運を運んできてくれてありがとう、クローバーちゃん!」


「え……いや、あの、自分は……」


 そのとき、机の下でキラリと何かが光った。

 しゃがんで拾い上げると――探していた、お気に入りのピアスだった。


「あー! ずっと探してたやつ! こんなところにあったんだ〜。よかった〜!」


「それは……よかったですね……」


 ピンポーン。


 チャイムの音が響く。


「宅配便でーす!」


 インターホンを確認して玄関を開けると、配達員が荷物を差し出した。


「お届け物でーす」


「ありがとうございます!」


 伝票を見てびっくりした。

 ずいぶん前に応募していた、最新のゲーム機。

 まさかの当選だった!


「きゃーっ!! 幸運続きじゃん!!」


 私は喜びのあまり、クローバーの鉢を手に取り、くるくる回って踊った。


「さっすが幸運の四葉のクローバー! ありがとう〜!」


「え……いや、その、自分は……」


 テンションのまま、ゲーム機を開封しようと机に置いたクローバーから離れる。


「あの……話を……」


 クローバーが小さくつぶやいた気がしたけど――

 まあいいか。ゲームのほうが今は大事!


 しばらくして、机の上の鉢から、ぽつりと声がした。



「あの……自分、クローバーじゃないです……

カタバミです……」

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