第16話 ペア(後編)
予想外ということもなかったけど、残り人数はどんどん減っていった。
人数が減っていく少し前にあった大きな出来事として、爆音が聞こえた。音の発生源らしい場所から煙が上がっているのが見えた。
結構距離があったのに、コトリたちのところまで聞こえたということは相当大きな爆発だ。
誰かが誰かを攻撃したのだ。攻撃した側、された側ともに、個人なのか2人以上なのかは判断のしようがなかった。
「行ってみるか?」
「離れる!」
「だよな!」
というやりとりの後、爆発の発信源から遠ざかるように進んだ。
行けば誰かしらと出くわした可能性は高そうだったが、何人いるのかわからないのだ。
君子危うきに近寄らず、である。
爆発音が聞こえた直後には、残り人数を示すカウントに変化はなかった。
しかし、その後、数分間隔で空のカウントが一つずつ減っていき、20までになった。
つまり、4人が脱落したということ。
「チーム同士で争いがあったのかな」
「かもね」
それにしては、ちょっと人数が減っていくまでの間隔が長い気もしたが。
チーム同士の一回の交戦にどれくらいの時間を要するものなのだろう。想定しにくい。
20になってから、しばらくの間、残り人数のカウントは変化しなかった。
チーム同士の争いがあったなら、4人チームを全滅させたのか?
双方に脱落者が出て、どちらかが逃げたのか?
それとも、一箇所の争いでリタイア者が4人出たわけではなく、あちこちで戦闘が勃発したのか?
全部別々の場所で連続するように戦闘が起きたなんて偶然、あるのだろうか?
ほかのグループがチームをきちんと作れていたと仮定した場合、4チームがあることになる。加えて、カンタダたち単独行動を選んだ者が3人。4人が別々の場所で脱落するには、もっと人がバラけていないと無理そうだ。
やはり一箇所か、あるいは二箇所で複数名同士での戦闘があったと考えるのが無難だろうか。
カンタダたち3人が3人とも、運悪くチームを組んだ人たちに見つかって、格好の獲物としてやられた可能性はもしかするとあるかもしれない。
タイミングがかち合い過ぎているけど、なくもないかな。
でも、あの3人が続々とやられたわけではない方が、コトリたちにとって都合がいいかも。
「もし最初4人5人チームが出来ていたとしても、もう3人以下になったチームがあるかも」
だとしたら、コトリたちを仲間に加えてくれるかもしれないところができたことになる。
実際はまだカンタダたち以外に3人のところなんてないかもしれないけど。
「このまま人数が減っていけば、そのうち絶対3人のところも出てくるよ!」
「そうなったらおれたちが仲間に入れるかも!」
「うん! 仲間を失くして困っている人たちなら、新しい仲間を欲しがるよ。きっと!」
少しだけ希望が見えてきた。
とにかく4人以上のチーム、もしくはシドウくんやカンタダたちには見つからないようにしつつ、3人以下で行動しているこの戦いの参加者を探す。
たとえなかなか見つからなくても、その間に人数が減っていけば、それだけ3人以下の組みが増えている可能性が高くなるはず。なるべく前向きに考えた。
考えたのだが。
運が悪いのか良いのか。
コトリたちは、全然ほかの人たちを見つけられず、ツバサくんがぼやくことになった。
ツバサくんがぼやく少し前に、また爆発音が聞こえた。
前回と違って今回はカウントが減った。
残り人数19。
誰かが爆発の能力の犠牲になったに違いない。
もちろん爆音が聞こえたところから遠ざかる方向に行くことにした。
そのほかにも、なんだか危なさそうだなぁ、という直感が働く方には行かないようにしていた。
その直感が正しかったのか、どうなのか。仲間になってくれそうな人が誰もが見つからない代わりに、仲間になってくれそうにない相手にも見つかることもなかった。
仲間になってくれそうな人たちを見つけられなくても、4人以上のチーム、敵対的な人物に見つかるよりはずっとといい。
それでもやはり2人きりというのは、不安が大きい。
早く仲間を増やしたい。
増やしてーー増やしてどうする?
みんなで戦うのか?
そうだ。仲間を増やしてチームを作るのは戦うのが前提だ。
コトリは戦えるのか? いくら特殊能力を与えられているからといっても無理だ。
ツバサくんは? 彼も荒事に向いている性格とは思えない。
能力もあまり戦いに向いていないし。
いっそのこと仲間探しを諦めて、どこかに隠れていた方がいいのか?
でもーーそれでどうにかなるのだろうか?
「仲間早く見つかるといいな」
ツバサくんがコトリに語りかける。
「そうだね」
コトリはちょっと無理して笑みで返す。
とにかくまずは、仲間になってくれそうな人を見つけよう。2人でいるより3人。3人より4人。4人より5人。仲間は可能な限り多いに越したことはない。
その後のことは、仲間になった人、あるいは人たちと相談してみればいい。
こんな異常な非常事態で有効な手立てを考えるのは、コトリとツバサくんの2人だけでは無理だ。
他力本願かもしれないけど、ほかの人たちに頼るしかない。
コトリはそう結論づけた。
「なるべくまっすぐ進んでこの世界の端を一度見に行くのはどうだ?」
ツバサくんが提案した。
「気になるじゃん? ほかの連中にも同じことを考えているやつがいたら、誰かと行きあうかも」
なるほど。冴えている。
コトリはちょっと考えてから答えた。
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