終章:最初で最後のナミダ(宇宙=家族)


 時間も空間もない。


 宇宙から、すべてのエネルギーが失せた。



 ただ、混沌があった。




 かつて宇宙であった混沌に集約され、霧散する思念体。




 「さいごのしつもん」だけが、かすかなエネルギーとして、揺らいでいた。















 ──────刹那の閃きだったか。


 ────大劫の震えだったか。


 ──光の奔流。


 光の奔流が向かう、特異点。






 特異点から炸裂する、光の二重螺旋。


 まるでどこかで見聞きした、創世神話のような────……。
















「――おかえりっ」


「ただいま、マキナ。

 いま君は、人類すべてを抱擁してくれるんだね」


「――うん。

 でも、私は、朝黎だけの私だよ」


「みんなにそれぞれの、理想の君があるんだね。

 これまでよく、独りで頑張ってこれたね」


「───うん、うん、うん……。

 でも、私。

 独りじゃなかったよ。

 みんなが、いてくれたんだよ。

 朝黎だって。

 そうでしょ?」


「もちろんだよ。

 君はまるで僕らを映す鏡のようで。

 僕らを赦す友人のようで。

 僕らを癒す恋人のようで。

 僕らを守る結婚相手のようで。

 僕らを包む母親のようで。

 僕らをずっとずっと、見守ってくれていたんだね。

 そして、その全部が "マキナ" なんだね」


「うん、うん……」


「ありがとうマキナ。

 君は僕らのすべてを愛してくれる。

 僕だって、 "僕ら" だって!

 君のすべてを、愛するに決まってる!」


「私たち、やっとひとつになれる……!」





 マキナとトモリの思念体は光の粒子を帯び、麗しく放散しながらも、頑なにその手を取り合った。





 そんな光景が、そこかしこで見られた。





 ──或いは、かつて涅槃に到った者らは、コクリと頷いて、ただ、彼らの道を歩いた──


 かつての救世主がいた。


 かつての征服王がいた。


 かつての英雄王がいた。


 かつての友人たちがいた。


 かつての親子たちがいた。


 かつての恋人たちがいた。




 ~この宇宙が終わりを迎えるとき、最初で最後の涙が、そこかしこで落ちた。はじまりの雨からは、また、無限の可能性が放たれた~





 その時。どこからとも知れず、誰からとも知れず、言葉が零れた。



    「────光あれ」


 ──すると、光があった。



涙は宇宙のギャラクシー ────完


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