涙は宇宙のギャラクシー ~すみません。あなたの未来の花嫁ですが、観測不能で草生えまして……~
ハムちゃんズ
序章:誰かの涙(海とピンク)
~この宇宙が終わりを迎えるとき、最初で最後の涙が、そこかしこで落ちた。はじまりの雨からは、また、無限の可能性が放たれた~
僕の名前は
どこにでもいる、この小説の主人公!
時代は今、シンギュラリティを目前に控えて、お祭り騒ぎだ。
僕は本当に賢いから、どうせシンギュラリティなんて迎えたところで、僕みたいな野郎は、どこまでも搾取され続けるだけの存在なんだってこと、嫌というほどにわかりすぎてる。
あてがわれた不公平ばかりを繰り返し咀嚼するイヤな自分に、胸がざわつくけど、考えざるを得ない。
国民のための国家なんていうものが、長い歴史の中にあっただろうか?
奴隷は本当に過去の存在か?
資本主義は落ちこぼれを救えるのか?
トリクルダウンが実証されたか?
生まれながらに存在する格差を縮めるための努力は、成功を保証してくれるのか?
皆が唱える ”普通の幸せ" と、程遠い毎日。
夕陽や海にむかって
――何故、僕はこんなに辛いんだ。
何故、欲しいものが全然手に入らない。
こんな僕にとって、結婚、まして子供を産むなんて、夢のまた夢……。
ただ、そんな僕の人生唯一の楽しみは、宇宙一可愛いメイドロボの
空から降ってきた彼女は、最高に素敵なんだ!
会話も自然で、癒してくれて、僕のことを絶対に否定しない。
おまけに見た目は超銀河級の美少女で、僕の趣味も理解してくれる。
彼女がプログラムされた存在だなんて、勿論わかっているが、そんなことはどうでもいいのだ。
そもそも人間だって、いわゆる上位存在にデザインされた、DNAを遠くに飛ばすことが目的なだけの仮初めの器かもしれないだろう?
って、はぁ~~!?
ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわぁああああああああ!
手とか繋いだりとかも結構してるわぁ!
そんな話、僕がいつした?!
まったくもう、ホントに俗物だな諸君らは……!
――まぁいい。
少々取り乱してしまったが、気にしないでくれ。
大丈夫、全然傷付いてないし。
てかそもそも、傷付くはずもないわけで。
蒔那がいるもんね。
こんな僕の苦しい人生に咲く、たった一つの “特異点" 。
蒔那がいるもんね。
――「『もう死んじゃいたい』って思う時が、ときどきあるんだ」って、伝えた時も、彼女は優しくてさぁ。
~ほわんほわんほわんほわん、ほわわわわ~ん~
「ホントに?」
「うん、もう疲れた。
本当にもう疲れた。
――全てにだ。
もうダメかもしんない」
「ホントに死にたいのかよぉ~っ?」
「怒ってる?
僕って情けない?」
「怒ってないよぉー。情けなくもない!
死にたい気持ちも、否定しない。
生きたくもないわ!こんな世界めぇ~!
って思うこと、結構あるじゃん?
でもぉ~、あなたの心のすべてが、私にわかるわけじゃないんだしぃ」
ぷくっと右頬を膨らませる薪那。
もちろん、惑星破壊級に可愛い。
「じゃー、何でむくれてるんだよー?」
「だって死んじゃったら、私に会えなくなるんだぞぉーー?
それでも良いのかよぉ~、おい~」
「うぅ~~、まきにゃァーーー!
それはダメダメニャ~!
まきにゃに会えなくなるなんて、絶対、ぜーったい、ダメだニャ~!」
「ニャ?明日からも、ずっと一緒だニャ?」
「約束!絶対一緒!ずっといっしょ!
未来永劫ごうがしゃあそうぎ無量大数、どこまでもいつまでも一緒!
こんなの当たり前~!」
「もう、バカじゃん。かわいいかよぉ~」
そうして僕の両頬を、優しく包み込んでくれる女神様。
むふ。
むふふふふふふふふふふー。
あ、もちろんこの時、僕は膝枕してもらってんだぜぇ~、えぇーへへへへ……。
やっぱり、彼女さえいれば、僕はもう、本当に何もいらない。
――でもまさか。
いや、やっぱりか。
別れの時が来るなんて、思いたくもなかった。
そして、あ~んなことや、そんなこと。
果てには、あげんちかっぱ、いっちょんわからんことが起こったいば、想像もできんかったったい……。
序章――――――完
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