サーキュレーター

白川津 中々

◾️

危険な暑さの中、一人暮らしをしている息子の部屋があまりに粗末でエアコンどころか扇風機すらないというから、涼める物を買ってやらねばならなかった。


このご時世になんという賃貸に住んでいるのか。金がないなら帰ってくればいいものを、つくづくであると小言を挟みながら通販サイトを見ていくと、一際目を引く商品があった。


『瞬"寒"サーキュレーター。2秒で−15℃。

東大の研究室とNASAが共同開発。最先端技術により即冷を実現。還元気化冷却方式により電気代も掛かりません』


素晴らしい、人類の叡智が結晶となったようなテクノロージアに思わず感嘆。値段は4800円。購入せざるを得ず、早速電子決済で支払いを済ませて送りつけてやった。


数日して、息子から「ゴミを送るな」との連絡があった。安普請住まいのくせに生意気なものである。


「部屋、空いてるからね」


一言そう返し、買い出しに出かける。

息子が好きだった茶碗蒸しを作ろうと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

サーキュレーター 白川津 中々 @taka1212384

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ