孤独のカナタ《ウィンカーズ探索隊》

荻谷 晴彦

僕はカナタ

荒れた土地。ここは地球。

そう呼ばれてた惑星。今はなんて言うんだっけ。

とある場所は荒廃したビル群。

またある場所は草の生い茂った広大なジャングル。

はたまた広大な海に似た川が流れているエリアがあった。

荒廃したビルは窓ガラスは跡形もなく、ただひっそりと佇む。人気は無く、草木は荒れに荒れまくって生えている。

現在、西暦2525年。地上はスコールと酷暑と極寒の温度差で、人々は約500年という短いスパンで死に絶えた、との話。

まさかそんな短期間で地球が滅亡の危機に陥るなんてちっとも思ってもなかったし、完全に滅亡したのかも分からない今を生きる僕。

昔の綺麗な解像度の高い写真はどれも綺麗な風景ばかり。

僕のひいひいひいじいちゃんあたりは予知夢とか『世間が騒いでた』とのことだ。

……と、最近知ったばかりだけれど。

僕はカナタ。

昔はどうやらって言うものがあったらしい。今はもう必要無いのか、誰も使ってないみたい。

こんな世界で、どこかに生きてる動物がいるかもしれない。なんて、言ってる人達がいるけど正直どうなのか分からない。

それを探索し、調査するのが僕。

僕の仕事、……ある意味、趣味みたいな感じになってるけど、あくまでも僕は仕事だと思って誇りに思ってる。

新しい発見はなんだかとても好奇心に満ちてるし、それを見つけた時の感動は、冒険に満ちてる。

そんな僕は、毎朝のルーティンを紹介しようと思う。

荒廃したビルの真下、いや、生きている仲間たちは地上では生きられなくなった。なので、地下にシェルターがあり、地下都市もある。だけどそこも段々と人類が減ってるとか……ああ、話が脱線した。

僕はその地下で暮らしている。

朝ご飯は固形物を取ることは無い。栄養のあるスープを補給して終わり。

地下都市で買える。スパウトパウチに入っていてドロっとしたスープが詰められている。

美味しいか不味いかは賛否両論ってところ。

今のご時世そんな所にケチつけてどうするんだろう。なんて思うこともあるけど、十人十色っていうんだっけ?

まぁ、いいんだ。体に補給出来れば。

それから、寝るためのスペースと、寝袋ってやつで、毎日寝てる。気候変動もないこの時代、寝袋位でちょうどいい。昔の人は中々いい物を活用してたみたいだ。どんな時に使ってたのかな。僕にはちっとも分からない。

何かを知るために僕は生まれたはずなのに、文字というものは全てひとつに集約されて、今みんな同じ物を同じように読み書きして、コミュニケーションを取っている。

そして僕は、寝袋から這い出て、スパウトパウチのご飯を食べて、そして最小限の手荷物と、黒い探査用の小型の薄い端末機を持って、僕は仕事のため、地上に出るための許可証、制限時間の設けられた時計型の探知機のふたつを身につけて、ゆっくりと地上への上下左右前後どこへでも行くエレベーター型の探査機に乗る。

この瞬間がとっても堪らない。見慣れた地下生活から、汚染され、人の住めない地上へ向かうこのドキドキ感は、いつまでも子供心を擽られる。

一旦この地下の空気をめいいっぱい吸って、小さく細く吐き出す。目の前の好奇心と恐怖はいつでも大歓迎……いや、ウソ。ちょっぴり怖いかも。

地上に出れば、大きな目をまあるくして見渡す。限りなく自然の多いビル群だったからだ。

制限時間は今日は長めの5時間。

ひっそりと足を踏み入れるそこは元は『ショッピングモール』と呼ばれてるところらしい。

緑に覆い尽くされて、原型が分からない。

1歩ずつ、1歩ずつ、ゆっくりと進んでいく。

僕は探索隊の一員なのだ。

「カナタ氏。今どこぞ?」

1本の通信がかかってきた。親友のリューイ。

彼は面白い言葉で話す。昔からそういう話し方をする人が少なからずいたとか、歴史の文学書に載ってたな。

「おやおや。リューイ。僕は今、移動式探査機から降りたところですよ。リューイはまた研究機関の一室で籠って研究中ですか?懲りないですね。」

「カナタ氏こそ、そんな危険が沢山あるところで……」

なんて話をしながらも親友とはタッグを組みながら調査していく。

僕は歩きながらキョロキョロと見渡す。見つけたものは研究機関にリアルタイムで送られる。異空間と異空間を繋げて行うやり方で、このやり方を昔の人は失敗することが多く、時々ソレを「神隠し」なんて呼ぶらしい。異空間をねじ曲げたりするイタズラな神が居たとか居ないとか。

今はAIが空間の捻りを調節してくれるから調査した物がどこかへ行ってしまうこともない。

「今回の戦利品はものすごく高価ですなぁ。カナタ氏、流石ですわ。」

「リューイがそういうならそうなのかもしれませんね。それで、今送った物はどういうものなんですか?」

「んー、調べてみてから結果を申す感じで良いでござるか?」

奇妙な口調で彼は軽快に話す。

ちょうど探索終えたところで制限時間も来たので、探索隊の元へ、移動式探索機の中へ戻って行く。僕、カナタの1日はそんな感じ。

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