魔王様と私
カシスサワー
第1話 見える人と見えない人
幼い頃から私には、他の人には見えないものが見える。
「どうしたの? どこか痛いの?」
変わった服装をした男の人が、大木の下で、泣いている。
「おじさん、大丈夫?」
涙を流すおじさんに、声をかけた。
すると、
「……見えるのか? 俺が?」
言ってる意味が、わからないけど、頷く。
「……怖くないのか? 俺が?」
確かに、厳つい顔してて、見た目はこわそうな感じ。
でも、不思議と、怖いとは思わなかった。
だから、「怖くないよ」そう答える。
すると、おじさんが、
「お前、名はなんという?」
名前を聞いてきた。
「結衣、天宮結衣(あまみや ゆい)」
「天宮……そうか、巫女の家系か……だから……」
おじさんが、そう呟く。
「結衣――」
母が、私を呼んでいる。
「あっ、もう、行かなきゃ。おじさん、これあげる。だから、もう泣かないでね」
あめ玉を一個、おじさんにあげた。
バイバイと手を振り、母の元へ。
あれから、十三年。
十八歳になった私は、普通の人とは違うということを、認識している。
普通の人には、見えないものが見える。
そのことに気づいたのは、小学校に入ってから。
目の前で飛んでる、人の顔した小さな生き物。
それが、同級生には見えていない。
妖精と呼ばれている、その生き物が、皆には見えてない。
それ以外にも、角の生えた小さな子供や、蛇の尾を持った女の人も見かける。
妖怪や幽霊などが、普通に、周りをウロウロしている。
なのに、周りの人間は、誰も気づいていない。
最初は、そのことが不思議だったけど、今は、私が普通じゃないんだと、理解している。
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