ただの就活

@rumihura

第1話

ただひたすらに、前髪から滴る雨水を眺めている。いつになっても止むことのない、バケツをひっくり返したような雨。就活のためにせっかく買ったスーツはずぶ濡れで、傘なんてものはとうに風で壊れた。憂鬱なこの気分を紛らわすため何も考えず、雨と風の音が聴こえるだけの帰路をたどたどしく歩いていた。

憂鬱な気分の原因は、雨というよりか今日の面接の方が大きい気がする。死に物狂いで書き上げたエントリーシートを提出し、その中からなんとか面接までこぎ着けた貴重な会社。だが、蓋を開けてみれば2対1の圧迫面接。こんな展開誰が予想できただろう。まだ就活は続くというのに。

すでにボロボロな自分の精神は置いておき、どうにか新卒のカードを持ったまま進みたい。

あれこれ考えてるうちに、最寄り駅へ着いた。が、こんなびしょ濡れの状態で電車に乗るのは果たしてどうなのかと思い、なけなしの1万円を持って、駅の隣にあるネカフェで休むことにした。

こんな状態でも受け入れてくれるネカフェに感謝しつつ、個室で服を最低限乾かした。ただ、鍵を渡されたときにいやな顔をされたのは言うまでもない。

「またお越しください」と言われつつも心底来ないでくれと言わんばかりの表情に同情を覚え、いまだ止まない雨を横目に急いで駅に入った。運よく電車が到着し、気持ちの悪い湿り具合のスーツを長時間着ることにならず、ほっとした。

そこから家に着くまでは正直覚えていない。次の面接まで日が浅いということに加え、とにかくこの気分をどうにかしたかった。

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