刻まれた呪い
くるみと穂乃果の奇妙な行動はエスカレートしていった。
ある日、穂乃果は母親に向かって突然暴言を吐き、掴みかかった。
母親は驚き、必死に抵抗したが、穂乃果の力は信じられないほど強かった。
普段はおとなしい穂乃果からは想像もできない凶暴さに、母親は恐怖を感じた。
くるみもまた、父親に対して激昂し、物を投げつけたり、壁を殴ったりするようになった。
両親がなだめようとしても全く聞き入れず
まるで別人格が宿ってしまったかのようだった。
さらに恐ろしいことに、二人の自傷行為が悪化してきて、気が付くと顔や足を爪で引っ掻いていたり、腕には「ワタシノモノダ」という不気味な言葉が浮かび頭を壁に打ち付けていたりするのだ。
しかし、その時の記憶は全くない。
まるで操られているかのように、自分の意志とは無関係に体が動いているようだった。
親たちは娘たちの変わり果てた姿に心を痛め、原因を必死に探った。
病院に連れて行っても異常は見つからず
精神科医に相談しても明確な診断は下されなかった。
そんな中、穂乃果の母親が、娘が最近
降霊術に関するサイトを見ていたことを思い出した。
まさか……
そんな非科学的なことが原因なのか?
しかし、他に考えられることは何もなかった。
くるみの両親も、娘が最近奇妙なうわごとを言っていたことを思い出す。
「……返して……私の……体を……」
二人の親たちは、藁にもすがる思いで
心霊現象に詳しいという人物を訪ねることにした。
その人物は、二人の娘に起こっていることは、降霊術によって呼び出された邪悪な霊の仕業だと告げた。
小春を装って近づき、徐々に二人の精神を蝕んでいるのだという。
「完全に憑りつかれる前に、何とかしなければ……」
専門家は、強力な浄霊を行う必要があると告げた。
しかし、そのためには、まず邪悪な霊の正体を突き止めなければならないという。
その夜、くるみはまた奇妙な夢を見た。
暗く冷たい場所に一人立っている。
遠くから、あの聞き慣れた小春の声が聞こえる。
「……助けて……くるみ……穂乃果……私じゃない……」
声は苦しそうで、今にも消え入りそうだった。
その時、背後から冷たい気配が迫ってきた。
振り返ると、そこにいたのは小春ではなかった。
何か黒い影が、恐ろしい笑みを浮かべて
くるみに手を伸ばしてきた。
その顔は、まるで見たこともない、おぞましいものだった。
くるみは悲鳴を上げて飛び起きた。
まだ体は冷たく、心臓は激しく鼓動している。
夢の中で聞いた小春の最後の言葉が
頭の中で反響していた。
「私じゃない……」
もしかしたら、降霊術で呼び出してしまったのは、小春ではなかったのかもしれない。
あの奇妙な声、奇妙な出来事、そして自分たちの変わり果てた姿……。
全ては、小春を装った邪悪な何かのせいなのだとしたら……。
しかし、その邪悪な存在は、もう深く二人の心に巣食ってしまっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます