浄化の儀式
「絶対に、あの子たちを救い出す。
そのためなら、どんなことでもするわ」
くるみと穂乃果の母親たちは、固い決意を胸に、浄霊師の指示に従うことを決めた。
浄霊師は、邪悪な霊は小春になりすまし
二人の精神を完全に支配しようとしていると説明した。
そして、この霊は単なる浮遊霊ではなく
非常に強力で悪意に満ちた存在であると警告した。
浄霊は、くるみの家で行われることになった。
薄暗いリビングには、複雑な模様が描かれた布が敷かれ、その上に数本のロウソクが灯されていた。
芳しい線香の香りが漂い、張り詰めた空気が部屋を支配する。
くるみと穂乃果は、意識は朦朧としているものの、なぜか穏やかな表情で布の上に横たわっていた。
しかし、その顔色は土気色で、時折不自然なけいれんを見せる。
浄霊師は、厳かな声で祝詞を唱え始めた。
その声は低く、部屋の隅々まで響き渡る。
すると、突然ロウソクの炎が激しく揺れだし、部屋の温度が急激に下がった。
母親たちは身を寄せ合い、震えながらその光景を見守る。
「出ていけ! 邪悪なるものよ!」
浄霊師の鋭い叫び声が響き渡った瞬間
くるみと穂乃果の体が大きく跳ね上がった。
二人の口から、まるで獣のようなうめき声が漏れる。
それは、おぞましい響きだった。
部屋中の物がカタカタと音を立てて揺れ始め、壁に飾られた絵が落下し、ガラスが砕け散る。
あたりには、腐敗したような異臭が立ち込め、母親たちは思わず口元を押さえた。
くるみと穂乃果は、まるで透明な糸に操られているかのように体をねじ曲げ、苦悶の表情を浮かべる。
その目からは、生気が失われ、代わりに底知れない憎悪が宿っていた。
「ワ、タ、シ、ノ、モ、ノ、ダ……!」
ねじれた声が、二人の口から同時に響いた。
それは明らかに二人の声ではなかった。
くるみの母親は、娘の腕にひどい引っ掻き傷があることに気づき、戦慄した。
それは、以前くるみが自傷行為をした際についたものだったが、傷口から黒い液体が滲み出ているように見えた。
浄霊師は額に汗を浮かべながらも、さらに声を張り上げて祝詞を唱え続けた。
部屋の異変はさらに激しさを増し、天井から埃が舞い落ち、照明が点滅を繰り返す。
くるみと穂乃果の体は、限界を超えて反り返り、関節が不自然な音を立てる。
「穂乃果! 穂乃果、聞こえるの!?」
母親が、思わず娘の名を叫んだ。
すると、一瞬だけ、穂乃果の目に光が戻ったように見えた。
その瞳には、苦痛と、そして助けを求めるような感情が宿っていた。
「……ママ……助け……て……」
か細い、しかし確かに穂乃果の声が聞こえた。
その直後、二人の口から再び地の底から響くようなうめき声が上がり、体は激しく痙攣した。
浄霊師は顔色を変え、さらに力を込めて呪文を唱え続ける。
その時、部屋の隅にあった鏡が、突然バリンと音を立てて粉々に砕け散った。
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