13 情報の板

今日も今日とて、誰もが手にする冷たい板。

正確には冷たくはないのだが、友人の手よりは冷たいだろう。


しかし、この板はひと度、感情が爆発すればすぐに暖かくなり友人の望みを叶えようと努力する。

知りたいことがあれば、ツルツル滑る板に指を滑らせ角張った矢印を押す。

そうすれば板は友人の知り得ない次元から答えを導き出し、表示させる。

答えは速ければ速いほど、多ければ多いほど友人の心を満足させる。

だからこそ、板は常に気をつけている。

次元へ続く道を邪魔する障害物を不審者を罠を。

高速で見回し、判断し友人に提供する。

それが板の使命なのだ。


しかし、この板はそれだけではない。

友人は漫画が好きなので漫画の無料アプリを大量にダウンロードした。

常に固まらないように気を付けながら、ページを捲る板の緊張感は計り知れない。

友人はゲームも大好きだ。

大体いつも、大容量のゲームをダウンロードするからかくつかないように調整するのが上手くなった。

いつもどんな時も支払いのときでさえ、板は友人と共にあった。

一番の友人だった。

けれど、この関係は有限だ。

あと半年で板は友人と離れることになる。

引き継ぎが面倒だと友人は呟くが、最近は板同士の共有もスムーズになっている。

きっと友人ならすぐに新しい板と仲良くなれるだろう。


お腹の減りも早くなった。

発熱が増えた。

画面が固まってしまうことも増えた。

覚えられないプログラムも出てきた。


「次の友人とも仲良くしてくれ」


板は緩衝材の入った袋に入れられ、その情報を記憶を楽しかった日々、全てを消して眠りについた。


友人の手には冷たい板がある。

正確には冷たくはないのだが、友人の手よりは冷たいだろう。

記憶を記録を引き継いだ板はよろしくと画面を光らせた。

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