●1-7 ポスト

ぐしゃぐしゃ


むしゃむしゃ


ずるり


ぶしゅ


深夜の少年の部屋に響き渡る食事の音。

異常な程、大きな音にも関わらず少年の両親が起きてくる気配はない。


その日の少年はいつも通りにゲームをしていた。

願い事のおかげで宿題をしなくても叱るものもいない。

思う存分、遊び、好きなおかずだけ食べ、満足げに少年をベッドに横になった。

少年にとってのいつも通りになった日常。

静かに寝息を立て、意識を完全に夢に手渡した時、それは宙に浮いて現れた。

木製のポスト。

少年の願いを叶え続け、少年の世界を創り上げた存在。

そのポストがゆっくりと少年に近づいた。

「あー長かった」

ポストはそう呟くと、がばりと口を大きく開けた。

そのまま、躊躇なく少年の腹にかぶりつき・・・引きちぎった。

「人の欲ってのは尽きないよな。おかげで美味しいものにありつけるわけだけど」


待ったかいがあったってもんだ


臓物を、脚を、腕を、喉を、頭を・・・。

骨ひとつ残らずに平らげていき、ポストはメインディッシュと残して最後の臓器を見つめた。

動かすものがないはずなのに、未だに鼓動を続けている心臓。

ポストは口の両端をあげた。

「人間の心臓ってのは、一番欲望まみれになったやつが旨いんだよ。特に人の死を願うやつとかな」

真っ黒な欲望は甘美な味がする。


ぶしゅ


メインディッシュを食べ終えたポストは満足げに宙に浮くと、そのまますうっと姿を揺らしながら暗闇に消えた。


そのときの姿は、少し朱色に色づき普通のポストに少し近づいた姿となっていた。


「ありがとよ」


ポストに近づけてくれて


誰にも聞こえることない感謝の言葉が部屋に響き、少年の骨が噛み砕かれた状態でベッドに吐き出されていた。

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