少年少女は夏に集う

調楓

夏のせいだ。

ああ、本当に腹が立つ。

エアコンがあるからなんて理由で図書室に集まりやがって。

こんなに暑い夏のせいだ。


いつもはがらんとした図書室も、夏の間は大盛況。

空いている席は見当たらず、そこかしこで話し声がする。

『図書室ではお静かに』なんて決まり文句も、奴らには聞こえないらしい。


ガタリ、と席を立つ。

数冊の本を手にカウンターへ向かい、顔なじみの委員に手続きをしてもらう。

ため息を吐きながら図書室から離れ、茹だるような暑さの廊下を歩く。


少し歩けば空き教室がある。

エアコンはなく、一台の扇風機があるだけの小さな教室。

この暑さの中そんな場所にいるもの好きなんでおらず、こもった空気だけがある。


部屋に入り、窓を開け、たった一台の扇風機を強でつける。

扇風機の風を感じながら、手に持った本を置いて勉強の準備をする。


やっと落ち着いて勉強ができる。

俺はどうにかしてでも成績をあげなければならないのだ。

そのためにも、勉強を休むわけにはいかない。


カリ、カリとシャーペンの音が響く。

煩い蝉も、轟音を立てる扇風機も集中の前では聞こえない。

問題を解いて、解答を確認する。そしてまた問題を解く。

愚直な方法だが、これが一番の方法だと思う。


冷えた感触が首にあたる。

突然の感覚に体が飛び跳ね、机がガタンと音を立てた。


「や、随分やってるようだね」

「お前な...声をかけろと何度言えば」

「まぁまぁ、そう怒らずにさ。はい、冷た~い飲み物だよ」

机に缶ジュースがトン、と置かれる。


「君みたいに勉強にお熱な人にはお似合いでしょ?」

「そういうお前は勉強しなくていいのか」

「私はしなくてもできるもん」

「そうだったな。ほんと、羨ましいよ」


隣の席にどかっと座り、片肘をついてこちらを見る。

「...私が教えてあげよっか?」

「いーや、俺は自分自身の力でお前を超える」

「私を超えるって、ほんとに言ってるの?下から数えた方が早いくせに」

「だーかーら勉強をしてるんだ。わかったら邪魔をしないでくれ」

「じゃ、私はいつも通り隣の席に座ってるよ。あ、扇風機はもらうね」

彼女はひょい、と扇風機を持ち上げ、風を独占する。

「せめて横振りにしてくれ...暑くて勉強できないだろ」

「はいはい」


ああ、顔が熱い。

多分、耳も赤いのだろう。

これもきっと夏のせいだ。

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少年少女は夏に集う 調楓 @chika-maple

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