第29話 カオスすぎる文芸部
がらり、と。
「失礼します。
しかし、彼の挨拶は、目の前の光景にかき消された。
三人の女子部員が、音楽に合わせて楽しそうにダンスをしている。そして残りの二人は、それを完全に無視するかのように、黙々と本を読んでいる。
「……どういう状況だ、これ? おーい! ダンスやめーい! 一旦落ち着こう! まずは自己紹介からだろ、普通!」
「新入部員の君に、我々の活動を止める権利などない! これは、文化祭の演劇練習だ! 俺は三年の
「先輩でしたか。失礼しました。でも、演劇の練習なら、なんで先輩は踊らないんですか?」
「ふっ……。俺はな、ダンスにかこつけて『私って、今を生きてる!』とでも言いたげな、頭の中が年中お花畑のリア充が、心底嫌いなのだ。ダンスで存分に体力を消耗させ、その後に訪れる空虚な徒労感を味わわせる。――すなわち、これはリア充への復讐なのである!」
「……あの、この
今度は、隣で本を読んでいた女子生徒が、冷ややかに言い放った。
「私は、一刻も早く誰かに代わってほしいと願っている、生徒会長の
「誰がクズだ! ジョークだよ、ジョーク! ……
「白百合ですって? あなたのような単細胞にしては、気の利いた比喩を思いついたじゃない」
「……黙ってれば、綺麗なのにな」
「あなたも、その卑屈な言動さえなければ、それなりの顔立ちをしているのに。勿体ないわね」
「「…………」」
次の瞬間、
「えーと……。先輩方のじゃれ合いは、終わりましたでしょうか? ていうか、
「うん! これ、すごく楽しいよ。みんなの動きがピタッと合うと、すごく気持ちがいいの。
「もちろん! 踊るぞ! ……てか、結局、ここは何部なんだよ!? ははっ!」
「めぐっち、ダンスのキレ、めっちゃ良くない? 本ばっか読んでるから、運動は苦手なんだと思ってたけど、すごいじゃんね、
セイラが褒めながら、
「……まあ、リズム感は、ある方なんじゃない」
「二人とも、最高だよ! ダンスも最高! 俺さ、甲子園出場が決まった時より、今、三人がこうやって仲良く、楽しそうに踊ってる姿を見てる方が、何て言うか……めちゃくちゃ嬉しい。文芸部に入って、本当に良かったって思った」
「あっ、そうだ、忘れてた。イケメン萌え萌えの
「……なんだか、無性に後輩が可愛く感じてきたぞ! よし、
「あなたがキモすぎて、
その時だった。
部室のドアが、ガラッ!と、先ほどよりも激しい音を立てて開いた。
部員全員の視線が、そこに立つ文芸部顧問、
「よおっ! 今日も青春しているかい! だーい、ちゅ♡ちゅきなー♪しゅごーく褒めじょーじゅなー♪ぼくの心のマイダーリン♡♡
事情をよく知らない
「あ、ありがとうございます……」と返事をしつつも、他の部員たちは、慣れているのか、苦笑いを浮かべるほかなかった。
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