第8話 精算と鍛錬の日々
王宮の屋根の下では、今日も誰かが誰かを陥れようとしている。
だがその下――地下の王族ダンジョンでは、俺は“見えない敵”ではなく、“見える敵”とだけ向き合える。
ここだけは、力を磨くことが正しく報われる場所だ。
第二階層の探索は、徹底して効率を重視した。
「マギア、次の部屋。出現パターンは?」
「《クロースコウモリ》三体、《ファングウォーム》一体。配置は距離50シュル、直線通路。挟撃の可能性あり。」
「では、スキルが最大限に発動するように正当防衛の要件を満たしてから、攻撃する。」
小剣を手に、滑るように走る。
クロースコウモリは空中から毒針を飛ばしてくるが、今の俺には《毒感知》がある。
僅かな風の違和感だけで、飛来の方向がわかる。
跳ぶ、回避、被弾。その後に、攻撃を始める。
「ッ……!」
一体目の翼を斬り落とし、二体目の腹に蹴りを入れる。
が、三体目が背後から突進――
マギアの尾が閃いた。
「《光紋結界(プロテク・シグル)》」
光の輪が俺を包み、衝突の衝撃を半減。俺はその隙に反撃し、全てを地に落とした。
息を吐く間もなく、地面を割ってファングウォームが飛び出す。
「きたか、こっちが本番だ。」
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《ファングウォーム》Lv8
特徴:高速地中移動、噛みつきによる裂傷、毒液噴射
状態:捕食欲求(高)
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奴らの動きは速い。だが、《損害精算》がある限り、むしろ“傷をもらう”のも戦術のうちだ。
左腕に噛みつかれた瞬間、血飛沫とともにスキルウィンドウが開いた。
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《損害精算》発動:
・裂傷(中)+毒耐性チェック
→取得:《咄嗟の反応》Lv1、《致命回避》Lv1
→毒効果低減、反応速度+1
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「……もらった」
牙を突き立てられたその刹那に、俺は逆手に小剣を突き刺した。
喉奥に、確実に届いた一撃。
ファングウォームがのたうち、光の粒になって崩れる。
勝利。だが、それだけじゃない。
レベル、スキル、そして各ステータス。全てが少しずつ、確実に“強化”されている。
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経験値+96 Lv5 → Lv6
スキル:《二連斬り》Lv1、《暗所感知》Lv1、《呼吸制御》Lv1
ステータス:敏捷+1、技量+2
※累積損害による精算ボーナス適用中
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「マスター、傷の回復処理を行います。……今宵も順調ですね。」
「ああ。次で十体目だ。……あと二、三戦すれば中ボスの条件も整うな。」
マギアの尾が傷をなぞると、みるみる痛みが引いていく。
肩に乗る彼女の存在が、今では“自分の一部”のように馴染んでいた。
「しかし……これだけ傷を重ねても、むしろ強くなっていくのですね、あなた様は…」
「それが《損害精算》ってスキルだ。正当防衛を心がけると効果が上がることも分かった。この能力は、つくづく理不尽を受ければ受けるほど、強くなる物らしい。」
理不尽を受け続けて、強くなっていく。
この王宮では、生き延びることそのものが戦いだからだ。
「くれぐれも無理はなさいませんように。上手に受け流したり、回避したりすることも大切ですよ。全てを受け止めていたら、命がいくつあっても足りませんよ。」
「ありがとう。善処する。」
「…このことだけは、何度申し上げても分かっていただけないようですね。」
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