気づけば美少女たちに囲まれてるけど、みんなヤバいくらい依存してて、どこにも逃げられない地獄の純愛ハーレムが成立してしまった件

境界セン

第1話

「…嘘でしょ?」


声が震える。目の前には、血まみれの剣を握りしめたまま、ニヤリと笑うリリアーナがいた。彼女の足元には、今まさに息絶えたばかりの男が転がっている。


「邪魔だったのよ、あの男」


リリアーナは、返り血で赤く染まった頬に、俺の指を優しく這わせた。ゾッとするような冷たさ。なのに、その瞳はどこまでも熱い。溶けるような、狂気の熱。


「レオン様と…あんなに楽しそうに話してたから。私、胸が苦しくなっちゃって」


そう言って、彼女は俺の胸に頭を埋めてきた。血の匂いが鼻腔をくすぐる。吐き気がするのに、突き放せない。いや、突き放すことなんて、もうできない。


「リリアーナ…お前、本当にやったのか?」


俺の声に、リリアーナは顔を上げた。その顔に、微塵の悪びれもない。


「ええ、もちろん。だって、レオン様を困らせたくなかったんですもの」


困らせたのは、他でもないお前だよ。そう言いたかったが、言葉は喉の奥に引っかかって出てこない。彼女の瞳には、俺しか映っていない。その純粋すぎるほどの執着に、俺はいつも言葉を失う。


「さあ、レオン様。あんな汚い男のことは忘れて、私のことだけ見てください」


リリアーナの指が、俺の顎を掴んで上向かせた。その視線が、俺のすべてを飲み込もうとする。背筋が凍る。


「…わかったよ」


俺は、絞り出すようにそう答えるしかなかった。


その日の夜、俺は自室で一人、静かに息を吐いた。ここに来て、もうどれくらいの時間が経っただろう。気がつけば、俺の周りにはいつも女たちがいた。それも、俺に異常なまでに執着する女たち。


「はぁ…」


テーブルに置かれた魔道具の明かりが、俺の顔を青白く照らす。この世界に転移してきてから、俺の右目には奇妙な力が宿っていた。俺が見つめた相手は、どんな人間でも俺に絶対的な服従と、そして狂気的な愛情を抱くようになる、と。まるで呪いのような力だ。


最初にこの力の餌食になったのは、この帝国の若き女騎士、セフィリアだった。彼女は元々、冷徹で無感情なことで知られる人物だったが、俺の瞳の力を受けた瞬間から、まるで別人のように俺に甘え、俺を求めるようになった。そして、その執着心は、彼女の強固な意志をねじ曲げ、俺の言葉を絶対的な命令として受け入れるように変えてしまったのだ。


「レオン様、お休みの時間ですよ」


突然、扉がノックされる音も無く開き、セフィリアが静かに部屋に入ってきた。彼女の瞳は、いつも以上に俺に吸い寄せられているように見える。


「セフィリア…どうしたんだ、こんな時間に」


俺が尋ねると、彼女はゆっくりと俺に近づいてくる。その歩みは、まるで獲物を追い詰める捕食者のようだ。


「レオン様の寝顔を拝見しに参りました。…もちろん、お傍で一夜を過ごさせて頂いても、よろしいですよね?」


セフィリアの声は、普段の彼女からは想像できないほど甘く、そしてどこか危険な響きを含んでいた。彼女は俺のベッドの横に立ち止まり、その手をゆっくりと俺の頬に伸ばす。


「いや、それは…」


言いかけた俺の言葉を遮るように、彼女は俺の唇に指を置いた。


「いいえ。レオン様が私を拒否するはずがありません。あなたは、私の全てです」


その言葉と同時に、彼女の瞳が仄かに赤く光った気がした。それは、俺の力が彼女に深く根付いている証拠。そして、彼女の感情が今、完全に俺に支配されている証でもある。


「…わかったよ。好きにするといい」


抵抗するだけ無駄だと悟り、俺は諦めて目を閉じた。セフィリアは満足げに微笑むと、静かに俺の隣に横たわった。彼女の腕が、俺の腰に回される。まるで壊れ物を扱うかのような、けれど決して離さないと訴える強い力だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る