第19話

「おめでとうございます」

 顔を上げると、白スーツ姿のドロップが立っていた。

「悲しみの涙、確認できました」

 ドロップは、にこやかな笑みを見せた。

「悲しみの涙?」 

 ドロップに言われ、初めて自分が泣いていることに気が付いた。

「良ければ、どうぞ」

 ドロップは、私に手鏡を差し出す。

「ハンカチじゃないの?」

 私が聞くと、ドロップは笑顔を崩さずに答えた。

「鼻水をかまれたら困るので」

「そんなことしないよ」

 私は鏡を受け取る。

「ひどい顔」

 私は鏡を見て笑った。

「そうですか?」

 ドロップは私の顔を見て言う。

「私には、大変美しく見えますよ」

「噓でしょ」

 私は、ベッドに置かれた箱ティッシュで涙や鼻水を拭く。

「嘘ではありません。涙は美しいものです」

 ドロップがあまりにも真顔で言うから、私はなんて返せばいいのかわからなくなってしまった。

「ねぇ、ドロップ」

 私はベッドに寝転がる。

「なんでしょう?」

 ドロップは、私に背を向けるようにしてベッドへ腰かけた。


 

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