第17話

「ただいま」

 家に帰ると、お母さんが笑顔で迎えてくれた。

「雨音、お帰り」

 でも私の顔を見て、すぐに笑顔は消えてしまった。

「なにかあった?」 

 お母さんの心配そうな顔が苦しくて、私は首を振る。

「なんにもないよ」

「でも......」

 お母さんは、必死に言葉を探すように私をみる。

「今日の給食おいしくて、おかわりしたの。そしたら、お腹苦しくなっちゃった」

 私の嘘を、お母さんは信じてくれた。

「そう」

 いや、信じたふりをしてくれた。

「夜ごはん、今日はいらない」

「わかった」

 心配そうなお母さんに背を向け、私は自分の部屋に引っ込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る