雨音が聞こえるそんな日は

遥前 備

プロローグ

第1話

朝目が覚めると、奇抜な男が立っていた。

「おはようございます。今日は素敵な天気ですね」

白スーツの似合う高身長。色白でくっきりとした顔立ちで、右目の下には青い雫のようなマークがついている。頬まで伸びたくせっ毛は、綺麗な水色だ。

そんな男が、ベッドで横になっている私を見下ろしている。

「雨降ってるけど」

私はむくりと起き上がり、そう返した。

今は6月半ば。外はどんより薄暗く、絶えず雨音が聞こえてくる。

「はい、雨は素敵です。どんな汚れも洗い流してくれる、涙のようです。こんな素敵な日にあなたと出会え、大変嬉しく思います」

にやり。本当にそう聞こえてきそうな表情で、男は笑った。

「出会うって、そっちが勝手に来たんでしょ。てか誰?」

私が言うと、男は頷いた。

「これはこれは、大変失礼致しました。私、涙の案内人を勤めます、ドロップと申します」

「涙の案内人?」

その後、ドロップは長々と説明を続けた。内容を簡単に話すとこんな感じだ。


その1 ドロップは人の涙を流す補助をする仕事をしている。(ここでの涙は、感情的な涙のことを指すらしい)


その2  私は小6から二年間涙を流してなく、このままだと心の健康が危険に脅かされるらしい。(思春期に三年以上涙を流さないと心は死ぬんだとか)


その3 私は進級するまでに4つの涙を流し、健康な心を取り戻さなければならない。(4つというのは、喜び、悲しみ、恐れ、怒りのこと)


 

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