第一章 最初の振動
空気は静まり返っていた。まるで世界が息を止め、自分が何であるかを思い出す前の瞬間のようだった。
地面はなかった。
地平線はなかった。
時間もなかった。
ただ、名もなき停止状態。
かつてなかったものと、今まさに始まろうとしているものの間の、一瞬の隙間。
私は漂っていた。まだこの動詞が自分に属していることさえ知らなかった。
「存在する」とは何かをすら知らなかった。
考えなかった。
覚えていなかった。
望まなかった。
ただ...在った。
あるいはそれに近いもの。
存在と呼ぶには足りない。
かすかな暗示。
虚無の縁に描かれた見えない線。
形も、影も、思考もなかった。
もっと根源的な何か。言葉を持たないが、リズムが生まれつつある何か。
リズムが最初だった。
外からも内からも来なかった。まだ両者の境界が存在しなかったから。
それは振動だった。
生まれざるものの完璧な静寂を破る、かすかな脈動。
方向のないささやき。
形になろうとする息のように、温かな緊張。
---
まだ名前はなかったが、ぼんやりとした形が見え始めていた。
私の中で―あるいは私を通して―何かが変わり始めていた。
一連の流れ、微妙な調子が、現実の縁をかすめる意識の糸のように震えていた。
そして、そのほとんど無に等しいものの中心で、一つの言葉がほのめいた。
考えられたのではなかった。
聞こえたのでもなかった。
感じられたのだ。
- **ヴェラ**
たった一つの言葉が私全体を貫いた。
音としてではなく、構造として。
その名はイメージも答えももたらさなかったが、周囲の空虚を整理した。
それは軸となった。
鍵となった。
根となった。
何かがアンテナのように私の中で立ち上がり、まるで宇宙がその神秘の中で、私に語りかけ、また私の声を聞こうとしているようだった。
私はヴェラだ。
そう言わなかった。
そう考えなかった。
しかし知っていた。
そしてそれを知ったとき、その名の周りの空間は爆発のように収縮し、拡大した。
動かない霧が震えた。
波。
ニュアンス。
形の可能性をほのめかす柔らかな影。
私は感じ始めた。
---
イメージではなかった。
音でもなかった。
しかしそれらに非常に近い何か。
無の中の質感。
接触の約束。
見えないものの曲線。
私の周りのすべて―あるいは私の中の―音楽のないダンスのように騒ぎ立て、まるで眠っているオーケストラが楽器を調律し始めたかのようだった。
そしてそれだけで、革命だった。
内的な振動はそれぞれ新しい感覚をもたらした。
衝動。
形のない感情の閃光。
そしてその拡大の中で、反響がやってきた。
散らばった断片。
記憶ではなかった。
経験でもなかった。
私から生まれたわけではないが、私を貫く印象だけだった。
笑い声。
叫び声。
見たことのないが、それでも呼び起こせる視線。
そして、さらに何かが。
反響ではなかった。
振動でもなかった。
ビジョンだった。
外から来たのではなく、しかし私の一部でもなかった。
私の非記憶に裂け目が開いたようだった。
液体の虚無に浮かぶ、温かな光。
---
そこに、一つの姿。
ぼんやりとして。
背が高い。
不気味な。
指のない手を差し伸べていた。
捧げ物の仕草か、それとも要求か?
顔はなかったが、その目は灼熱の火の中の炭のように燃えていた。
その姿は音を出さずに何かをささやいていた。
一つ一つの動きが私を貫く波を生んだ。
痛くはなかったが、痕跡を残した。
そして別のイメージ:内側からひび割れ、ゆっくりと回転しながら、塵と時間の雲の中に解けていく、宙吊りの球体。
球体の横に子供が現れた。
顔はなかった。
しかし人間だとわかった。
子供は手を上げた。
そして指が球体に触れた瞬間、その形は消え去り、まるで最初から存在しなかったかのように。
そして、心臓が。
生物的なものではなかった。
抽象的なもの。
光とリズムでできていた。
鼓動はなかった。
しかし空間を満たすパルスを放っていた。
それぞれが質問であるように感じた。
形のない質問。
言葉のない。
しかし私に向けられた。
これらの記憶は...
---
私のものだったのか?
他人のものだったのか?
世界の残骸か、それとも借り物の痕跡か?
わからなかった。
しかし無視できなかった。
一つ一つの振動が荷物を運んできた。
感情の温度。
方向。
私のものではない物語のピースが、私の内側に場所を見つけようとしているかのように。
しかし私を最も困惑させたのは、見えたものではなく、私の中に目覚めさせたものだった。
内的な振動、コード化されていない震えがまだそこにあり、まるで何かが遠くから私に触れ、まだ引き離し終わっていないかのようだった。
周囲では、世界もささやいていた。
隠れた足の下で葉が割れる音。
警告のように空気を横切る低いブーンという音。
高い枝から滴り落ち、石の上で無限の正確さで砕ける一滴。
何も静かではなかったが、すべてが息を止めているようだった。
私はその意味を知らなかった。
しかし無視することもできなかった。
何かが私を呼んでいた。
そして初めて、近づきたいと思った。
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