ある男の黙示録
ビュッフェ
第1話:希望の光に満ちた都市スティ・ロンハート
スティ・ロンハ―ト王国の王都シアルドュンの朝は、黄金色の陽光が白い大理石の城壁を包み込む光景から始まりました。
その光は、垂直に伸びる城壁の表面を滑り落ち、街の石畳にきらきらと反射しました。
道を行く水路の澄んだせせらぎは、そのきらめきを幾重にも散りばめ、都全体を光の粒で満たしているようでした。
王宮の広大な庭園には、珍しい花々がこの世のものとは思えないほど鮮やかな色彩で咲き誇っていました。
深紅のバラはベルベットのような光沢を放ち、瑠璃色の花弁を持つ花は、まるで夜空の星を閉じ込めたかのように神秘的な輝きを放っています。
中でも幼いジョニ―(5歳)の心を捉えたのは、朝露をまとった純白の「平和の蕾」でした。
父である長谷川・歩国王(35歳)が「生命の信仰」における「生命の息吹」そのものとして愛し、国民全てに尊ばれたその花は、ほのかに甘く、どこか懐かしい香りをあたり一面に漂わせ、ジョニ―はその香りを嗅ぐたびに、胸いっぱいの安心感に包まれました。
街並みはどこまでも清潔で、白く輝く建物は整然と立ち並び、どの家も丹精込めて手入れされていました。
通りを行き交う人々は皆、笑い、語らい、その表情は喜びに満ち、瞳の奥には未来への揺るぎない希望が宿っていました。
彼らの話す「ロンハ―ト語」の軽やかな響きは、この国の平和と知的な探求の象徴として、街中に満ちていました。
職人の店先からは、磨き上げられた金属細工が陽光を眩く反射し、色鮮やかな絹織物が風に揺れるたびに、軽やかな音を立てました。
市場の活気はひときわ強く、朗らかな声が響き合い、行商人の威勢の良い声が心地よいざわめきとなって空間を満たしていました。
王都の小さなパン屋の店先では、中川黄身斗に抱き上げられたジョニ―が、焼きたてのパンから立ち上る香ばしい匂いに目を輝かせていました。
「わぁ、いい匂い! 黄身斗おじちゃん、あのパン、食べてみたい!」
ジョニ―の無邪気な声に、パン屋のおばちゃんが優しく微笑みかけます。
「おや、ジョニ―坊やじゃないか。今日は特別にいい匂いがするだろう? 熱いうちに食べな!」
そう言って差し出された小さなパンを、ジョニ―は嬉しそうに受け取りました。
黄身斗は、おばちゃんに会釈しながらジョニ―の頭を優しく撫で、その小さな笑顔を満足げに見つめていました。
そんなやり取りが聞こえ、街全体に温かな交流が満ちていました。
空には、王都と各地を結ぶ連絡用の大型飛空艇が、悠然と白い軌跡を描いていきます。
その巨体が地上に影を落とすたびに、人々は誇らしげに顔を上げ、自らの国の繁栄の象徴として見つめました。
「見て、お母さん!また飛空艇だよ!」
「ええ、あんなに大きなものが空を飛ぶなんて、本当にすごいわね。」
遠くの山々は豊かな緑に覆われ、森は絵画のように穏やかな色彩をたたえ、どこまでも平和が永遠に続くかのような錯覚を覚えるほどでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます