第29話 囚われたディーノの話
「ほんとに来るのか?」
「間違いなく、来るさ」
「大丈夫なんだろうな?」
「なんにせよ、うまくやらないと」
川沿いにある、寂れた工場跡地。コソコソと話をしながら、ミッションクリアに向け作戦遂行中なのは、ハートブレーカー四天王。そして目の前の檻の中に入れられ、拘束されているのはディーノ。
「んむーっ! むぅぅっ! んーっ!」
口を塞がれているため、声は出せない。
「それにしても、まさかこんなことになるなんてなぁ」
赤鬼風が呟くと、
「でも、これが成功すりゃ、とりあえずは落ち着くだろ?」
緑のゴーレム風が返す。
皆、乗り気ではない。だからと言って、反対を押し切るだけの力も説得力もない。トップダウンの組織において、上への反骨心は命取りだ。言葉上の話ではなく、本当に命を取られる可能性がある。多少の疑問には目を瞑るしかなかった。
それに……
「アモール様は無茶も多いが、必ず結果を出してるしな」
青ライオンがしみじみと語ると、全員が深く頷いた。
「あの時だって……」
話を続けようとした青ライオンだが、外に車が停まる音を聞き、耳を澄ませる。
「……どうやら到着したようだ」
四人は顔を見合わせ、頷き合った。
*****
地図に示された、川沿いにある廃工場。辺りにほとんど街灯がないせいで、暗く、不気味な印象だ。
「新海さん、ありがとうございます。ここからは私一人で行きますので、どうぞこのままお引き取りを」
丁寧に礼を述べると、
「こんな所に市原さんだけを残して帰れるわけがないっ」
と、車を降りようとする。
「駄目です! これは私の問題なので、新海さんは関わらないでください!」
「市原さん」
亜門が、車を降りようとする凛音の手を握った。
「どういう事情であれ、好きな女性を危険に晒すような真似は、私には出来ません」
「すっ……!」
薄々わかってはいたが、「好きな女性」とはっきり言われ、頭に血が上る。
「こんな時に想いを告げるなんて卑怯かもしれませんが、私はあなたが好きです、市原さん」
「しっ……ししし新海さんっ」
凛音はどもりながらも、大きく深呼吸を二回繰り返し、言葉を続ける。
「あの、お気持ちは非常に有り難いのですがっ、ちょっと、今はそのっ、とにかく緊急事態なのでっ」
しどろもどろになりながら話し、最後は
「とにかく車からは降りないでください! お願いします!」
と言い放ち、急いで外に出る。顔が火照っているのが自分でもわかった。
新海亜門に告白された。“かもしれない”だったことが、“確定”したのだ。おかしな気分だ。今日はこれで、二度目の告白。人生のモテ期が今日という日に集約されているのかもしれない、とさえ思えてくる。
「いかん、気持ちを切り替えねばっ」
パン、と両手で自分の頬を軽く叩くと、目の前にある廃工場へと足を向ける。今はまず、ディーノのことを最優先に考えなければ。
工場の扉に手をかけ、一気に押し開ける。中からは光が差し、その眩しさに、目を細めながら中へ足を踏み入れる。
「四天王っ!?」
色とりどりの四人を前に、凛音が声を上げる。ディーノに何かあるとすれば、勿論相手はハートブレーカーだろう。しかし、アモールではなく四天王の方だったとは。
「一体どういうつもりっ? なんでディーノを攫ったのよ!」
ディーノはウサギ型のまま折に入れられ、口も塞がれているようだ。凛音を見て、しきりに首を振っている。来るな、と言っているのだろう。
「来たな、ポニー・レイン=サンシャイン」
青ライオンが腕を組んで、斜に構える。
「お前を呼んだのは、取引の為だ」
今度は緑のゴーレムがくぐもった声で言う。
「取引?」
これは、前回の続きなのだろう。四天王はアモールの言い出した「魔法少女への求婚」に反対していた。つまり、ディーノを返して欲しければアモールの申し出を断って、引退しろと。そういう話でまず間違いなさそうだ。
「こいつを返して欲しくば……」
「わかったわ、アモールからの申し出はちゃんと断る」
「大人しくアモール様と婚姻を結べ」
声が重なる。
「……ん?」
「……は?」
聞き間違いか? 凛音には、婚姻を“結べ”と聞こえてきた。
「たんま。今、なんつった?」
凛音が四天王に手を伸ばし、聞き返す。
「だから」
「アモール様の申し出を受けろ、と」
「そうだ。ちゃんと話を聞けっ」
代わる代わる責められ、まじまじと四人の顔を見渡す。
「……どうしてそうなった?」
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