第19話 祟り 


 怨霊(おんりょう)とは、自分が受けた仕打ちに恨みを持ち、たたりなどをする霊(死霊または生霊)のことだが、悪霊の一種ともされる。


「オイ皆で俺たちの先祖の因縁の場所に行こう」

「いいね!おっちゃん連れてってよ」

「群馬県利根郡片品村の山中にある金井沢金山にみんなで向かおう」


 このように話す面々、大樹と悠馬と翔太は犯人Aの運転するトヨタヴォクシーに乗り、埋蔵金を密かに埋めたとされる場所金井沢金山を目指していた。この時まだ悠馬と翔太は高校3年生だった。


 2023年6月下旬4人で、現在の群馬県利根郡片品村の山中にある金井沢金山に出掛けたのだが、片品村の山中を通る道は、場所によってカーブが多かったり、道幅が狭かったりするので慣れない道にうっかり運転操作を誤って、4人を乗せた車は谷底に転落して4人は亡くなった。


 実は…大樹と悠馬と翔太と犯人Aの4人は、この埋蔵金事件と関係のある人物だった。過去の事件を呪い怨霊となり「死」を連想させる4日間だけ、この世に現れ仕返しをしにやって来たのだった


 一方の悠馬の家族だが、そのわずか5日後の法事に悠馬も行く筈だった祖父母の家に、家族3人は出掛け、そこで…深夜何者かに侵入され寝込みを襲われ、両親と妹は手当ての甲斐もなく命を落としていたとあるが、あの真夜中寝込みを襲われたが、両親と妹美咲は助かっていた。


 だから……衆合地獄など現れる訳がない。


 実は…亡くなった悠馬に現れていた。悠馬は知らず知らずのうちに女子を夢中にさせて、いろんな女子からの贈り物を受け取り、メールを受け取っていながらチョッとお気に入りの子には、メールを送り会ったりしたこともあったが、優衣が現れてからと言うもの着信拒否を決め込み、女子の気持ちを知らず知らずのうちに弄んでいた。これは大勢の女子の心を弄んだのだから浮気と思われても仕方ない。


 衆合地獄は浮気やいじめた過去のあるものが落ちる地獄だ。だから亡くなった悠馬に現れた地獄だったが、父と美咲を恨んでいたので、その強い思いが、自分が体験した衆合地獄と言う恐ろしい地獄に突き落とすことで、復讐が完結した。悠馬の目の前に父と美咲が衆合地獄に落ちるという小気味いい形になって表れ、悠馬はほくそ笑んだ。


「ふっふっふ……ざまあみろ💢💢💢」


 この衆合地獄は恐ろしい地獄だった。例えば、ある場所では、鬼に山の間に追い込まれ、両方の山が近づいてきて押しつぶされてしまい。またある場所では、鉄の臼と杵で突き砕かれ、鬼やそこに集まってきた熱鉄のライオンや狼に食べられてしまう。そして、また別の林では木の上で誘惑する美女をめがけて木を登ってしまうと葉っぱが刃物に変わり、体を引き裂かれてしまうのだ。


「ギャッギャ――――――――――――――――ッ!」


「両方の山が近づいてきて押しつぶされてしまい、ペッチャンコになり血が噴き出して死んでしまう。くくく苦しい!!!」


「鬼や熱鉄のライオンや狼に食べられてしまい跡形もなくなってしまいそう」


 こうして…いったん地獄に落ちたが、地獄の余りの恐ろしさに、この世に地縛霊となって戻って来て悠馬と祖父母の住む家に憑依してしまった。


「あんな地獄になんていられるものか、地縛霊とは土地や建物などに憑依するので、特定の場所この家に憑りついたのよ。死の瞬間の衝撃や強い未練から、特定の場所を離れることができずにるのよ」



 残念なことに一階で寝ていた祖父母は変質者に襲われ死亡していた。


 母の実家に帰省することは悠馬が何よりも望んでいる事だったが、5日前のあの日に悠馬は帰らぬ人となっていた。



 🏯

 幕末の慶応4年春、武士団が8頭の牛に細長い木箱を2個ずつ背負わせて通過した。

 現在の片品村山中にある金井沢金山にやって来た一同は、細長い木箱を金を掘ってあった穴倉に埋めた。



 2023年6月下旬だったが、暑さに耐えきれずにやって来た4人。今年の6月は、各地で異例の暑さとなり6月中旬以降は全国的に厳しい暑さが到来し、6月下旬は西日本で広く梅雨明けするなど、早すぎる夏本番を迎えている所が多くなっていた。6月の真夏日・猛暑日が最多となった地点も多かった。


 夏真っ盛りに清涼感に浸りたい一行は、東京の暑さに辟易して、この時期にやって来た。片品村山中は猛暑とは思えないほど涼しく、空気が美味しい。一獲千金を夢見て埋蔵金のありかを目指してやって来た一同が、いろいろな思惑を抱えてこの場所に降り立った。


「1867年にこの地に埋められた埋蔵金だが、どこに埋められているか分からないし掘り起こすのも至難の業だ。でも……残酷に殺された先祖がこの場所に眠っているのは確かだ」


 実は…悠馬の先祖は正義感に燃える曲がった事は大嫌いな頭領補佐官道長だった。


 この性格を煙たく思っていた頭領利信は、この男を何とかしたい。そうかねがね思っていた。我慢の限界の利信の指図で、道長は首を切られ生首を片品村山中の谷底に捨てられてしまった。


 道長についていた家来も数名殺害されたが、道長の部下英明の子孫が犯人Aだった。英明は妻夕花を奪った利信を恨んでいるが、その夕花まで生き埋めにされ殺害されて憎しみは倍増している。


 首を切られ殺害された道長の部下が英明だから、悠馬と犯人Aが知らぬ間に吸い寄せられるように近づいた感は否めない。道長の子孫が悠馬で、部下英明の子孫が犯人Aだからだ。



 こうなってくると、利信と夕花の息子が信幸で、更には信幸の子孫Ⅹが田村陽子さんと言う事になるので、英明の子孫である犯人Aが、田村陽子さんを残虐な方法で殺害した理由も理解できる。


 犯人Aの先祖英明は、ピストルで撃たれ目を覚ましたところを生き埋めにされて、生地獄の苦しみを味わいながら死んで行ったので当然のことだ。利信を恨んでいたことは歴然たる事実。


 それでも…夕花と信幸は恨むのは筋違いだと思うのだが?

 そうはいっては見たものの英明は自分が無念の死を遂げた後、すぐに憎き利信と結婚した夕花を快く思っていなかった。更には信幸を授かり自分の築き上げた会社「日光繊維」を奪った利信の子孫を恨んでも致し方ない。自分が築き上げたものを憎き利信や利信の子孫に奪われたのだから……。


 こうして最も残酷な方法で子孫の田村陽子さんが殺害された理由が納得できたが、体を鋭利な刃物で切り裂き内臓の鼓動を耳に焼き付け、霊力で一瞬にして内臓は閉じられた。


「えい」と言って引き裂かれた体を指でなぞると閉じられた。


 犯人Aは異常人格者だったが悠馬の前では紳士を押し通した。だから……悠馬は犯人Aと馬が合った。



 そして…橋の上から落とした。

「クックック!人の血を見ると興奮してゾクゾクする。ふっふっふっ!はっはっはっは!ああああああああ!興奮する。もっともっと……わっはっはっは」



 🌃


 利信と愛人春子の娘華子の子孫ℤが女子高生北野友里花ちゃんだったが、何も恨まれる筋合いがないのでスルーする。


 🌃


 小5男児が祖父の家に行くと言って昼過ぎに家を出た後、ある男と偶然出会った。男は男児に対し「青色に黒と黄色に赤の超綺麗な蝶々あげるからついておいでよ」といって近所の高台に誘い出し、その場で絞殺して側にあった廃墟に遺体を隠した。そして…次の日、その男は前日の殺害現場の廃墟を訪れ、男児の遺体の首を金のこぎりで切断、頭部のみ家に持ち帰った。翌朝、被害男児の頭部が愛知県岡崎市✕✕町の空民家の庭で発見された。目は見開かれていた状態だった。


 この小5男児の先祖は埋蔵金武士団の頭領利信の部下Tだった。犯人Aの先祖は英明で利信を恨んでいる。ピストルで撃たれ生き埋めにされて、更には妻夕花を寝取られ「日光繊維」を乗っ取った張本人だからだ。いくら部下だったからと言っても道長の首を切ったのはこの男利信の部下Tだった。


 道長の死に様は見るに忍びないものだった。


「しし死にたくない。タタッ助けてくれ――――――――ッ!」


 命乞いをするも、容赦なく含み笑いを浮かべ殺害したこの男Tを許せる訳がない。

 悠馬はこの小5男児殺害現場に死霊となり犯人Aと共にやって来た。


「同じ恐怖と苦しみを思う存分味合わせてやったわ!💢💢💢ふっふっふ……ざまあみろ。嗚呼……欲望の歯止めが利かない。クックック!何よりも血を見ると興奮してゾクゾクする。ふっふっふっ!はっはっはっは!ああああああああ!興奮する。もっともっと……」


 信頼する可愛がってくれた上司を目の前で殺されての恨みの犯行だった。悠馬は犯人Aに感謝して益々強い絆で結ばれていった。



 この様な背景があり犯人Aは次から次に殺害を実行に移した。最初は復讐の塊と化した犯人Aは一人で実行していたが、徳川埋蔵金 バスツアーと言う胡散臭いバスツアーで、偶然にも大樹と悠馬と翔太と知り合いメール交換から始まり現在に至った。


 🌃


 この時期は大樹と悠馬と翔太は犯人Aと巡り会っていない。犯人Aの単独犯である。悠馬は1度だけ自殺系サイトにアクセスして犯人Aの事は知っていた。


 2017年12月頃に自殺系サイトに目をつけたAは、多重債務(すでにある借金の返済に充てるために、他の金融業者から借り入れる行為を繰り返し、利息の支払いもかさんで借金が雪だるま式に増え続ける) やいじめなどを苦にした自殺志願者を「集団自殺しませんか」と言葉巧みに騙し、なぶり殺しにすることで自殺を「手伝い」、自らは死刑になる形で後を追う、という「無理心中目的の説得ずくの快楽殺人」という手口に及んだ。


 埋蔵金武士団の頭領利信の部下ⅤとWの子孫だったが、この2人は英明を重労働に駆り立て、時には暴力を振るう事もあった。更には利信にあることない事チクリ埋蔵金の山分け金を格段に減らされた。英明のお告げを受け、犯人Aは利信の部下ⅤとWの子孫をいたぶり殺した。


「2倍も働かせやがってこれだけかい。許せない!許せない!許せない!ああああああ……嗚呼……それでも…殺す感覚は止められない!クックック!人の血を見ると興奮してゾクゾクする。ふっふっふっ!はっはっはっは!ああああああああ!興奮する。もっともっと……わっはっはっは」


 🌃


 2018年3月頃Aは、インターネットの自殺サイトを利用して知り合った女性B子((当時25歳)を、同日午後8時30分頃、河内長野市加賀田の山中に連れ出し、停車中のレンタカー内でB子の手足を縛った上に鼻と口などを複数回塞ぐなどして繰り返し失神させた。その後、午後10時頃にB子の鼻と口を塞いで窒息死させ、衣服をはぎ取った後にB子の死体を近くの河原に掘った穴に遺棄した。妻夕花を寝取り子供まで儲けてその後妻夕花が幸せになっていれば許せたが、愛する夕花を生き埋めにして殺害したので利信の愛人Yの子孫にも苦しみを味合わせたかった。


「失神させ鼻と口を塞いで窒息死させ苦しむ姿が興奮する。ふっふっふ……妻夕花を苦しめたせいだ。思い知れ。はっはっはっは」


 どうも……田村陽子経営のタムラハイツの住民の1人柳田辰夫が、家賃滞納が原因で逃げていたが、この男は事件とは関係がなかった。


 🌃✨ ✨ ✨ ✨ ✨🌃


 江戸時代末期の1867年に江戸幕府が大政奉還「幕府(徳川慶喜)から朝廷(天皇)に政権を返す」に際し、密かに埋蔵(まいぞう)したとされる徳川埋蔵金は、幕府再興のための軍資金と見られている。埋蔵金は金塊(きんかい)あるいは貨幣とされ、現在もマスメディアや個人などにより発掘が試みられているが、発見には至っていない。


 幕末の慶応4年春、武士団が8頭の牛に細長い木箱を2個ずつ背負わせて通過した。

 現在の群馬県利根郡片品村の山中にある金井沢金山にやって来た一同は細長い木箱を金を掘ってあった穴倉に埋めていたと、その時武士団の頭領利信が、家来の一人に手で合図を送った。

 正義感に燃える曲がった事は大嫌いな頭領補佐官道長を、煙たく思っていた頭領利信は、この男を何とかしたい。そうかねがね思っていた。


 我慢の限界の利信の指図で、道長は首を切られ生首を谷底に棄てられてしまった。道長についていた家来も数名殺害され、その埋蔵金は2箱だけ埋めて残りは持ち逃げした。

 何故全部持ち帰らなかったのかと言うと、牛が長旅で相次いで2頭死んだからだ。


 だが、その中の1人が、埋蔵金を盗むことなど断じて許せないと、強硬手段に出た。実は…勘定奉行大栗(現在の財務官よりちょっと上)に大層可愛がられていた英明はまだ23歳なのに、出世街道まっしぐら。だから誠実に仕事をこなして大栗の元に戻り、手柄を立てた事を喜んでもらいたい。


「埋蔵金を山分けする事は絶対にダメです。ちゃんと指示通り埋めましょう!!!」


「貴様!ガタガタ言うんじゃない!オイ……やっちまいな!」


 そう言うと部下が剣を取り出し英明の首目掛けて振り下ろそうとした。


「ヤヤッヤメテクレ!」

「もう生意気な口は聞くな。言う通りにして無駄な抵抗はよせ!💢💢💢」

「ハハッ💦💦ハイ!」

「てめえは逆らったから皆の2倍働け!」


 英明は道理を説いただけなのに逆切れされ、不公平にも自分だけ重労働の割には分け前が少なく恨んだが、この武士英明は道長の最も信頼する知性と剣さばきにも定評のある優秀な男だった。頭領利信にすれば、憎い道長のお気に入りだったので真っ先殺害したいところだったが、優秀だったがためにこんな横柄な口を叩く男でも命を長らえることが出来た。


 英明は種なしで子供は生まれなかったが、娘ゆうみはその事実を知らないので英明が実父と思っていた。利信によって川に流され助けられたゆうみは、あの後養父母に育てられ幸せな人生を送ったゆうみだった。それでも…可愛がってくれた父英明と母夕花を殺害された事実を、感の良いゆうみはハッキリと分かっていた。そして…利信を恨んでいた。


 ここで言いたいのだが、英明の娘ゆうみの子孫が犯人Aである。



 それでも…大学生の大樹と翔太の先祖が誰なのか分かっていないが、一体先祖は誰なのか?


 いよいよ最終話も目前となって来ました。


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