灯る夢、散る記憶

@nrh_3230

プロローグ

心地よい風が吹く午後、僕は彼女と川沿いの道を歩いていた。

今日も他愛のない話をする。彼女は話すのが大好きで、僕はどちらかというと聞き役に回ることが多い。僕たちは同い年だけど、性格は正反対だった。天真爛漫で明るい性格の彼女と、どちらかというと落ち着いている僕。でも喧嘩はほぼしたことがなかった。ただ、一緒にいることが幸せだった。

「そういえば、もうすぐ記念日だね!」

ぼーっと下を見ながら歩く僕に彼女がそう言った。明るい彼女に支えられ、気づけば付き合ってから3年の月日が経とうとしていた。そうだね、と答えながら、頭の中ではプレゼントはどうしようかと考えを巡らせていた。誕生日やクリスマス、彼女はどんなプレゼントでも喜んでくれた。記念日はいつもより奮発したい、そう思った時彼女が口を開いた。

「プレゼントもう考えたの!それに、当日やりたいことも決めてあるんだ〜!早く記念日にならないかな〜!」

彼女は行動が早い。計画を立てるのが好きなようで、デートのプランとかもよく考えてくれる。負担じゃないのか心配していたが、彼女自身その習慣が身についているらしい。

「さすがだね、僕も楽しみにしてるよ。」

そう言うと彼女は嬉しそうに笑った。僕は彼女の笑った顔が好きだった。なくなるんじゃないかってくらいに細めた目、右ほっぺにつくえくぼ。ずっと、この笑顔を守りたい。そう強く願った、その瞬間だった────。

ふと前に視線をやると、何か大きなものが音もなく近づいてくる。彼女も気づいたようだったが、何が迫ってきているのかを認識する前に僕たちは同時に全身を打ちつけられた。ドサッ。地面に叩きつけられるような、鈍くて重い音が響いた。僕は頭を強く打ち横たわっていた。意識が朦朧とする。彼女は?僕は今にも意識が飛びそうな状態で彼女の姿を探した。彼女は僕よりも遠い場所に横たわっていた。動かない。

「────!」

僕は彼女の名前を呼ぼうとしたが声が出ず、そのまま眠るように意識を失った。僕たちに突っ込んできたのは、居眠り運転のトラックだった。

そして彼女は……即死だった。

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